FUCK YOU GOD!
不意打ちはずるい
EXTRA STAGE:You oblivious to the feelings of me.
「……ん、そういや鞠夜、最近感じ変わったな」
たまたまリーバーさんと相席になって一緒に遅めの昼食を取っていた私は、ふと思い立ったようなその声色に僅かに首を傾けた。そう言われるようなことはしてないはずだ。
「なんのことです?」
訝るように眉を寄せる私を意に介すこともなく、リーバーさんはまじまじと私の顔を観察する。いたたまれずに視線をそらし食事を続けると、彼は漸く合点がいったと顔を輝かせた。
「ああそっか! 綺麗になったな」
がっちゃん!
「あつ!」
「うわっ」
カップスープを口にしようとそろりそろりとカップを傾けていた矢先に発せられたその言葉に、私は平静を保つことができず狼狽するままに熱いスープと勢いよくキスをするはめになった。しかも少しこぼした。
「……大丈夫か?」
「……なんとか……」
見苦しいものをすみません、と反射的に出てきた涙をこらえた私は、リーバーさんから手渡された水にそのまま口をつけた。
「あ、悪い。そっち俺のだった」
「っ」
ふたたび粗相しかけるのをなんとかこらえる。近かったから思わずと気まずそうに頭をかく彼を責めることはできなかった。
「……で、いきなりなんですか」
心臓の鼓動を速めたまま、なんとか表面上だけでもと努めて落ち着いた振りをする。リーバーさんは果たしてなにに対してかまだ気まずそうにしていたけれど、ふと急に表情を緩めた。
「いや、前から思ってたんだけどな。鞠夜本人には言ってなかったなぁと」
「……敢えて言う必要もないかと思いますが」
「あっ、嫌だったか? セクハラのつもりじゃなかったんだが」
「いえ、そちらは全く気にしてませんので」
「そっか」
「はい」
ほ、と胸を撫で下ろすリーバーさんに、もう一度同じ質問を。
すると今度は先程とは違った笑みを浮かべて。
「好きなやつでもできたか?」
幾分かからかうような、微笑ましいものでも見るような顔に、私は思わずびくりと跳ねた。
「ほら、女は恋をすると綺麗になるって言うだろ?」
「……黙秘します」
私の顔がさっきからずっと赤いことなんて今さら言わなくたってリーバーさんには丸見えだし隠すにしても時を逃しすぎてもうできない。
リーバーさんはふぅんと追求こそしてこないものの、その表情からはありありと恥ずかしがらなくてもいいのにと伝えてきていて、私は最後の一口を胃に突っ込むと、失礼しますと席を立った。
「鈍いやつ相手だと苦労すんね」
「うるさい」
にししと笑うラビに拳をふりあげると、ラビはひらりと身をかわしてそれを避けた。予想の範囲内とはいえ気分は晴れない。
「相手にされてなくね?」
「うるさいって言ったのが聞こえないなら声帯でも潰そうか主に私のために」
「怒るなって」
「怒らいでか」
「……つんけんしてると可愛くないって言われるぜ?」
その言葉に、私はいよいよもってラビに殴りかかった。一発も当たらなくて苛立ちが増すだけだと知りながら。
2024/08/03 : UP