My sweetheart
※架空のホビアニ(『筆剣!バトルライナー』及び『ENDLESS :|| LINE』)の夢小説です。
予め説明はしていた。数あわせのために合コンに出席することになったと。彼氏殿は短く「そうか、分かった」と言って、理解を示してくれた。
と、思っていたのは私だけだったらしい。
もし何かあったら、との心配と、私も早々に引き上げようと思っていたので、酒も入るし車で迎えに来てもらえたら助かると思って、どの店で楽しむかは伝えていた。彼氏殿は珍しく嫌味のない笑みを浮かべて、頃合いを見て迎えに行くと言ってくれた。
それが、どうだろう。
蓋を開けてみれば、酒も入って皆理性が溶け始めた頃合いで、なんと彼氏殿が店の中まで迎えに来たではないか。丁度男連中の一人からベタベタ触られそうになって全て弾いていたところだったから非常に助かったのだが。
「やめときな、こいつの彼氏、すっごい面倒臭いから」
「たった今紹介にあずかった面倒くさい彼氏だが」
「はえ」
頼むごめんでもどうしても人数が合わないから顔だけ出して欲しいと頭を下げてきた友人が参戦してくれて、ああ助かる、とのんきに思っていると、真後ろからよく知った声が響いて両肩を掴まれた。
「すまないな、心配のあまり早く来てしまったようだ」
顔を見なくても分かる。絶対に良い笑顔をしている。これは。……まずいのでは? でも分かったって言ってくれたよね?
さっきまでにやにやしていた男の口元が引きつっている。あーあ。これ明日には身元割れてんだろうな。
「君は特殊インク開発部の期待の星だったな。俺の恋人が随分と世話になったようだ」
もう割れてた。嘘でしょ。早すぎでは?
男はと言えば『終わった』とでもいうかのように顔色が悪くなっている。大丈夫かと声をかけると、掴まれた肩により一層力を込められた。
「もう引き上げていってもいいか」
「あー、はいはい。ありがとね義理立てしてくれて。助かったよ。埋め合わせは要る?」
「気遣い感謝する。が、パートナーにしてもらうことにしよう」
友達のドン引きしている様子から、彼氏殿が満面の笑みを浮かべているのが嫌でも分かった。普段笑顔を浮かべない奴がにこにこしてたらそれは嫌な予感しかしないやつなんよ。本人もこの頃は分かった上でやっているからたちが悪い。笑顔は動物からすれば威嚇だというのは彼氏殿に関しては当たっている。
「ごめん、そういうわけだから帰るわ」
「いや、こっちこそ付き合ってくれてありがと」
あと彼氏殿がご立腹の件はマジでごめん、と小さく囁かれて私は苦笑した。まあ、確かに日頃あけすけと物というタイプの彼がここまで表だって何も言わず、しかしわかりやすい態度をしているのは私も彼のパートナーとして考えが甘かったかもしれない。それに、最終的に私がOKを出したのだ。友達を恨むつもりはない。
飲み放題食べ放題で予約していたから一人当たりの金額は分かっている。さて自分の分をと財布を出そうとすると、それよりも早く彼氏殿が金額丁度を机の上に置いていた。普段丁寧に紙を扱う麗しい指先がまぶしい。
全員閉口である。いや、そんな人だったっけ?
多少混乱しつつもへらへらと笑いながら手を振って席を立つと、思い思いに見送られた。
アルコールが入った上ヒールのある靴を履いている私に合わせてゆっくりと歩く彼を追う。まあ、しっかりと手を繋がれているんですが。
店員の声を背に受けながら店を出ると、ひんやりとした夜の空気に身体がさらされた。気持ちが良い。
「ちよまる、」
「明日は休みだったな」
言葉を続ける前に確認される。そうだと答えると、彼氏殿――千代丸は店のすぐ近くに止めていた車の助手席のドアを開けた。のそのそと座席に深く座ると、ばん、と扉が閉められ、運転席に彼が乗り込む。もたもたとシートベルトをつけていると、千代丸が私の方へ身を乗り出してきたからなんだろうと顔を上げる。
ちゅ、と唇が触れ合った。
まるで私の唇を舐めしゃぶるように吸い付かれ、何度もキスを繰り返される。彼の指先が胸の先を探ってきたところで、自分の手でそれを阻止した。
「ちょっと、店の前」
「たしかに事情を説明されて理解はした。だが、気持ちよく送り出したつもりは毛頭ない」
「でも、笑ってくれたじゃん」
「牽制する良い機会だったからな」
少し熱っぽく見つめられているのは気のせいではないだろう。まさかこうも嫉妬……嫉妬? されるとは思ってなかった。勿論、不用意な態度は避けていたから彼が気を揉むようなことが今までなかっただけともいうが。
それにしても彼の笑顔の意図が読めなかったなんて。
不覚、と思っていたのが顔に出ていたのだろう。彼は熱い手のひらで私の頬を撫でた。もう一度唇が触れる。ちゅむ、と音を立てて、遠慮のない舌が唇から口内へ割って入ってくる。
「ん、ふぁ……っ、だめ、だったら」
人通りが少ないとは言えないわけではない。恥ずかしくなって彼の胸を押しのけようと手で突っぱねると、離れていった舌先から唾液が糸を引いて落ちた。その向こうに、唇をてらてらとさせて、微かに目を細め、隙のある口元もそのままにじっとこちらを見つめてくる千代丸がいる。目が合った。
「家に帰らなくてもいいか」
「……はい」
じゃあどこへいくかなんて、分からない方がおかしい。
運転は慣れているとは言えホテルの位置なんて熟知しているはずもない――と思っていたのはまたまた私だけだったようだ。まるで知った道を走るように迷いなく車を走らせた千代丸は、そのままするするとホテルへ入った。
「……計画通りってやつでは?」
「流石に予約はしてない。まあでも、お前の好きそうな部屋があるぞ」
喜べ、と千代丸が笑う。否定しないと言うことは肯定と等しい。漏れなく彼とのえっちがつくのであろうことは容易に想像ができた。私も嫌じゃないので連れてこられるまま車に乗っていたのだけど。
私が合コンの話を振ったときからどのホテルに入るか見当をつけていたのだろうか。私の好きそうな内装を探して? だとすれば微塵も匂わせなかった千代丸はやはり食えない男だと思う。可愛い奴だと思えば良いのか、用意周到で抜け目ない男だと思えば良いのか。両方か。
車から降り、もうどうにでもな~れ、と全てを千代丸に任せる。頼もしい彼氏殿は戸惑う気配もなく私を部屋の中まで連れて行った。
「わあ」
果たして、案内された部屋は大きく重厚な作りのベッドが置いてある、広々とした所だった。窓はないが、部屋の広さが圧迫感を感じさせない。
靴を脱いでスリッパに履き替え、鞄を放り出す。気分良く洗面台やトイレ、浴室をのぞき見ると、こちらも綺麗だった。温泉地の家族風呂みたいな。浴槽なんて足を伸ばして入れるどころか、泳げそうな大きさ。
「気に入ったか?」
「うん」
絶対に湯船には浸かる。そう意気込んでいると、後ろから千代丸に抱きしめられた。つむじに唇が当たるのを感じる。
「煙草臭くない?」
「臭い」
「お風呂先にする?」
「手を出していいならそれでもいい」
あ、はい。別々に入るのはナシな感じですか。
「……一緒にはいる?」
折角広いのだ、勿体ない。そう思って提案すると、珍しく千代丸は目を丸くした。実質私からの誘い文句だからそれはそう。私だって少しくらいは申し訳ないと思っているのだ。千代丸のもやもやしてる気持ちが晴れるなら吝かではない。
私の提案に、千代丸は黙って浴槽に湯をため始めた。それが答えだろう。けれど、彼は私を連れて洗面所まで戻ると、ぐいと私の腰を抱き寄せて、据わった目で口角をつり上げた。
「折角誘ってきたところ悪いが、酔っ払いを一人で風呂に入れるのは心配だ」
「なにそれ、千代丸がここに連れてきたんでしょ」
「ああ、そうだな。だから手心を加えるのは風呂までだ」
酔っ払いだからとえっちを加減するつもりはないと言外に言われて、まあつまり、だから覚悟をしろと言われているのだと理解する。そうしてあれよあれよという間に服を脱がされて、私は千代丸に懇切丁寧にお風呂に入れられることになったのだった。
******
それから後のことは、なんというか、思い出せるが思い出すと身体が火照りそうな程濃密だった。お風呂場での優しさは嵐の前の静けさでしかなく、ベッドに運ばれた後はそれはもう、いつものように熱烈に愛されて快感の海へ沈められた。……だけでは、留まらなかった。
なんというか、こう、言うなれば。物凄く意地悪だった。いつも以上にフェザータッチで性感を高められたかと思えば、いつまでもちりちりともどかしい快感ばかり与えられて、ねだっても全然応じてくれなかった。
「ここだけでイけるんじゃないか?」
なんて言われて、乳首だけで緩急をつけて愛撫されてイってしまうまでやめてもらえず、身体の中が切なく疼いたまま乳首だけで絶頂の山を過ぎたときには、もう私は欲しくて欲しくて、あられもない声で喘いで、秘部を濡らしていた。
当然、それで終わるはずもない。そこから徹底的に下腹部をいじめられ、指と舌でかき乱されて、何度もイかされて、そんなに怒っていたのかと、配慮が足りなかったと謝っても、千代丸は平然と怒っているわけでも謝って欲しいわけでもないとけろりと言い放って。
「ただ、……そうだな、お前が俺の手で乱れに乱れて、めちゃくちゃになってるところが見たいだけだ」
本当にただそれだけなのだと、口ぶりや態度から分かってしまった私は、ローションがなくても股座をびちゃびちゃに濡らすまで千代丸自身のものに貫かれることはおろか、ろくに彼に触れることを許されなかった。
漸く快楽でぐずぐずに溶かされて、千代丸に挿れてもらえたかと思えば、今度は甘く、あま~く揺さぶられて、中イキがとまらなくて、気持ちよくて目もまともに閉じられなくなって。どこかうっとりしながら私を見下ろして両方の乳首をすりすりと指先で弄びながら腰を揺らす千代丸に全部丸見えなんだと思うとたまらなく恥ずかしくて、なけなしの理性で顔を隠せば、隠すなって言われて両手首を掴まれ、ベッドへ縫い付けられる始末。
「んああっ、やだぁ、っ やだやだ変な顔だもん……っふぁ、やあぁっ……!」
見ないで、と懇願しても、まるで聞いてもらえなかった。それどころかふは、と吹き出されて、
「いいから見せろ。キスができない」
酷く楽しそうに笑われて、その後は彼が満足して達するまで意識を手放すことも許してもらえなかった。
――今後は絶対に、頼まれてもこの手の場に行くのはやめよう。
翌日、敏感になってブラの中で擦れるのさえ痛い乳首とぎしぎしと軋む股関節を労られつつ朝風呂で世話をされながら、私はかたく心に誓った。
2021/07/02 UP
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