びんろうじぞめ
木ノ葉隠れの里、正面入り口。踏みしめた土がジャリ、と音を立てた。数は三。年に二回、他里と合同で行われる中忍選抜試験の準備に際し、スリーマンセルでの任務にあたったシコク率いる班は、片道約三日の行程を終えて無事、早朝に帰還した。
先に里の土を踏んだイズモとコテツがシコクを振り返る。
「何事もなくてよかったですね」
「他里はただでさえ気ィ使うからな」
やっと強張った体も緩むというものだ、とばかりにそれぞれに体を伸ばす部下二人に、シコクは苦笑気味に笑みをこぼした。
上忍である彼女が中忍の二人を引き連れて出ていたのは、主に昔彼女が行っていたことの引き継ぎも兼ねている。実力を認められ、試験官に選ばれた二人に学んでもらうことは大量にある。少し昔であれば難しかったことも、情勢の安定している今は腰を据えて次世代の育成にかかれることもあって、上忍が配置されることも少なくなかった。
それに加え、シコクは上忍になってまだ日も浅い。特別上忍として情報整理や中忍試験管として配置されていたころのノウハウがあることも手伝って、最近では特に上忍としての任務より後任の指導に当たることが多かった。
「お疲れ様でした。報告はこちらで済ませるから、二人はゆっくり休息を取るように」
「はい」
労いの言葉に、二人の明るい返事が響く。そのままシコクが報告書の作成にかかろうとしたところで、イズモが彼女を引き留めた。
「あの、シコクさん」
「はい?」
「この後お時間ありますか?」
「……そうだね、報告書の提出と試験の段取りについての微調整が終われば、あとは夜まで休息時間だから」
疲労は体力的なもので、ベッドで少し眠ればすぐにまた任務を命じられるまで待機できる状態に戻る。
シコクの返答にイズモは少し遠慮がちに言葉をつづけた。
「なら、もしよければもう少し資料整理と、試験の運びについて教えていただきたいんですが」
「うん、大丈夫」
「ありがとうございます」
シコクの快諾に、イズモは顔をほころばせた。相変わらず勤勉だなあとシコクは思いながら、頭の後ろで手を組んで二人の様子をうかがっていたコテツに目をやった。
「そうだ、どうせならどこかで朝ごはんでも食べてからにしようか。コテツはどう? 待てる?」
「シコクさんのおごりなら喜んで!」
任務帰りで疲れているだろうに、それも吹き飛んだかのように顔を輝かせたコテツに、シコクはつられるように笑った。その横で顔をしかめるのは、イズモ。
「コテツ! お前」
「いいよ」
コテツをたしなめようと口を開いたそれは、それにかぶせるようにして発せられたシコクの声によってさえぎられた。
「やった! じゃあ待ってます」
「うん。すぐに済むと思うから」
代わりに、この時間でも開いてるお店で二人の好きなところにしよう、とシコクが提案すると、いよいよもってコテツはじゃあオレ先に行って席とっときますと楽しそうに答えた。
「……いいんですか?」
「朝食だし、大人数でもないでしょう。気にしないで」
コテツとは反対に申し訳なさそうに恐縮するイズモを見て、シコクは笑う。それにそう何度もこんなことがあるわけでもないのだからと言って、コテツとともに先に行くように促した。
「あ、シコクさん、オレたち『あけぼの』って創作料理の店にするつもりなんですけど、場所ご存知ですか?」
「あー……ごめん」
「木ノ葉茶通りにある、小さい店なんですけど。今の時間なら、木ノ葉茶通りで開いてるのはそこくらいなんで、すぐにわかると思います」
「わかった」
オレあそこの厚焼き玉子好きなんですよ、と顔をほころばせたイズモに、シコクもまた目を細めた。
さて、と二人と別れたシコクは、リズムよく建物の上を跳躍して上忍待機所に立ち寄ると、報告書の必要事項に慣れた様子で筆を入れ始めた。こういった報告書の作成や整理は彼女の得意とするところで、腕を動かすその様子に迷いは全く感じられない。かといって必要以上に急ぐ風もなく、ほどなくして報告書は完成を見せた。
ふ、と満足そうに息をついて、シコクは報告書の提出へ。受付係がミスがないかをチェックし、それも終わると、お疲れさまでしたという言葉に一礼してシコクは外へ出た。ここから木ノ葉茶通りまではそう遠くない。
「あれ? シコクじゃない」
アカデミーを出てすぐ。まだ静けさの響く通りの上からかけられた声に、シコクは空を仰ぎ見た。
「カカシさん! おはようございます」
まだ閉まっている店の屋根の上に立ち、シコクを見下ろしているのはまごうことなき同僚にして先輩上忍であるはたけカカシ。
眠そうな右目はしっかりとシコクをとらえ、見かけに反して彼がしっかりと目を覚ましていることがうかがえた。
「任務帰り?」
そして彼女の出で立ちから出した推測を、僅かに首をかしげながら口にする。
「ええ。今から任務で一緒だった部下たちと一緒に朝食です」
「誰と?」
「はがねコテツと神月イズモです」
「……お前の手料理?」
「まさか。二人の好きな創作料理のお店が、ここにあるんですって」
「ふーん……」
「カカシさんは今から任務ですか?」
「まあね」
「お疲れ様です」
「お前もね」
短いやりとりを終え、カカシはじゃあ行ってくると再び屋根を蹴ろうとして、すんでのところで足を止めた。シコクに向き直って、何か言いたそうに手を動かす。
「前にうまい定食屋連れてくって言ってたの覚えてる?」
「勿論です」
「あれ、まだ有効だったりする?」
「有効でないと困りますね」
「……そ。じゃあ今日の昼、空いてるか?」
カカシの問いかけによどみなく答えていたシコクは、その言葉に考えるそぶりを見せた。
「お昼ですか、ちょっとまだわからないですね」
「待機でも入ってるか」
「いえ、イズモに指導することがあって、いつまでかかるかまだ分からないので」
「……」
寄越された言葉に、カカシは少しの間口をつぐんだ。それは思案しているのか、眠たげな眼からは感情らしい感情が見えない。
シコクが首をかしげると、そこでようやくカカシはシコクに視線を合わせた。
「じゃ、また今度にするか」
「はい」
「待機所には顔出しなさいよ」
「御馳走にありつけないのは辛いですからね」
神妙にうなずいてみせるシコクにカカシは目を細めると、今度こそ音もなく屋根を蹴ってその場を後にした。カカシの身体が見えなくなるまで見送って、シコクも再び歩き出す。
まだ里も活気づく前。それは様々な店が軒を連ねる木ノ葉茶通りとて例外ではない。おそらく起きているのは忍と、一部の労働者――それも忍の生活リズムに合わせている店くらいのものだろう。そういった人々もまた忍に理解のある、もしくは退役した忍であったりするものだ。
イズモの言っていた店もおそらくはその類だろうと思いながら、シコクは通りで唯一看板を出しているそこへ足を踏み入れた。
「あ、シコクさん!」
入店した直後かけられた声はまさにコテツのもので、シコクは用意された自分の席へと掛けた。
「遅くなってごめん」
「いえ、そんなに待ってないです」
「オレたちもう注文したんで、シコクさんも」
コテツからメニューを手渡され、シコクはぱらりとそれに目を通す。オレはシコクさんが来るまで待てっていったんですけど、とコテツをにらむイズモと、お前だって結局先に頼んだじゃねえかと返すコテツのやり取りを見ながら、シコクはここの厚焼き玉子好きって言ってたもんね、とその時のイズモの顔を思い出しながら間に入った。
「そうそう、ココ、オレたちの好きなもの両方あるんですよ。こいつは厚焼き玉子で、オレはまぐろのやまかけ! こういう取り合わせって他の店じゃなかなかないから」
「こいつ、ここのまぐろの切り身が分厚いから余計気に入ってんですよ」
それだけじゃなくてメシの量もサービスしてくれるんです、と目を輝かせるコテツに、やっぱり男は食べる量が違うんだと二人を見ながら笑みをこぼす。
「イズモはともかく、コテツは朝から元気だね……あ、お茶漬けがある。おいしそう」
「あ、焼きおにぎり茶漬けがすげえ美味かったですよ」
「そうだ、いつもならオレたちシメに食うんですけど。トッピングも選べます」
シコクの言葉に二人ともが丁寧に反応をくれる。それに耳を傾けながら、シコクはすみませんと店員を呼ぶために声を上げた。さっとやってきたのは年頃の女性。シコクを見て、愛想よく笑うと、遅くなりましたがとシコクに水と御手拭を手渡し、エプロンからペンとメモを取り出した。
「はい、ご注文お伺いします」
「焼きおにぎり茶漬けを一つ。トッピングは梅と三つ葉とゴマで」
「おにぎりの大きさはどうしましょう?」
「では貴女の手よりも少し大きめ位で」
「かしこまりました。焼くのに少々お時間いただきますがよろしいですか?」
「はい」
「ありがとうございます」
注文を終え、女性店員を見送ると、シコクは温かいお手拭で丁寧に手を拭いて、それから嬉しそうに水に口を付けた。
なかなかいいタイミングでもってきてくれるね、と機嫌のいいシコクに反し、イズモとコテツはぽかんと口を開いた状態でシコクを凝視する。それに気づいたシコクが首をかしげると、二人は未知の生命体にでも出会ったかのような顔をした。
「シコクさん、あの……」
「無理してないですか?」
二人のただならない表情に、シコクはますますもって訳が分からないと首をひねった。
「何が?」
「シコクさん持ちだからって我慢してるんじゃ」
「オレたちそこまで高価なもの頼んでないですよ! シコクさん生活がひっ迫してるとかじゃないですよね!?」
コテツの言葉に、シコクはようやっと合点がいったように手を鳴らした。それから、あのね、とため息を。
「浪費家じゃあるまいし……これでも十分報酬はいただいてます。あ、言っておくけど我慢もしてないからね。朝からそんなにたくさんの量は食べられないの」
「……足りるんですか?」
たしなめるようなシコクの声色にも、イズモは構わずにさらに質問を重ねる。シコクは十分だよ、と答えたが、それを聞いたコテツは唸り声をあげた。
「朝に茶漬け一杯なんて、いっそ抜いたほうがマシだ……」
それがこの店のそれを指しているわけではないとはいえ、よく店員の耳に届かなかったものだ。シコクは苦笑しながら、そういえば、と話を変えることにした。
「さっき道中でカカシさんに会ってね。そんなに長くは話さなかったんだけど」
今から任務で、大変そうだったと続けると、二人はそれはそれで各々反応を示して見せた。
くるくるとよく表情の変わる二人だとは思うものの、口には出さない。これも任務を終えて次の任務にあたるまでのささやかなひと時なのだから、いくら上官と言えど咎める権利はシコクにはない。
「あの人は上忍の中でも重要度とランクの高いものばかり任されるから、たぶん今回も戦闘が予想されるね」
チャクラ切れでまた病院に担ぎ込まれなければいいんだけど、あの人抜け忍からも目つけられてるからいくら今が比較的平和だからと言ってなかなかそうも言ってられないよね、死ぬよりは入院程度で済む方がいいし。
すらすらとコップに目を落としながらつぶやくシコクに、二人は互いに目を合わせて、それからイズモが口を開いた。
「あの」
「ん?」
「……シコクさんとカカシさんって、その、お付き合い、されてるんです、か?」
定まらない目線はそれだけ緊張しているか、聞きにくいことを聞いていると感じているのだろう。
シコクはと言えば、急なイズモの問いに、しばらく固まって目を数度瞬かせた。
「……ああ、もしかして例の噂?」
「ええ、まあ」
以前、シコクはカカシに昼食を振る舞ったことがあったのだが、たまたまその日からカカシを名前で呼ぶようになったため、噂好きの一部の人間が話を膨らませたのだろう。
シコクとカカシはただの同僚であり、最近でこそ比較的頻繁にやり取りがあるものの、それはイズモの気にするような甘いにおいのするようなそれどころか、極めて表面上のそれに過ぎない。
というのはあくまで主観を除いた会話の内容についての話であって、シコクはカカシを敬愛しているし、カカシはシコクにとって憧れの忍であるからもちろん好意は持っている。
カカシもまた自らシコクに話しかけてくるのだから、嫌ってはいないだろうことはシコクにも感じられた。
「そうそう、シコクさんの『先輩や年上には原則苗字に階級呼び』って有名ですよね。でもカカシさんだけ例外じゃないですか。お二人で何か話してるところも最近よく見ますし」
コテツの言葉に、シコクはさて何から言ったものかと苦笑した。
「結論から言って恋人ではないよ」
「でも、」
「まあ、カカシさんにそう呼ぶように言われたら、そうしないわけにはいかなかったというか」
「え、カカシさんが?」
「そう」
シコクの言葉に、二人はそれぞれ目を丸くする。呼び方ひとつ程度気にしない人のはずだ、とその眼はよく語っていた。そんなことはシコクとて百も承知である。
カカシの真意は先ほどのやり取りも含め依然としてわからないままだが、彼から好意的に構われている現状はけして悪いものではない。
「お待たせしました! まぐろのやまかけと厚焼き玉子定食です」
二の句が告げないでいる三人の沈黙を打ち破ったのはほかならぬ女性店員で、イズモとコテツの分を静かに机に置くと、シコクにはもう少々お待ちくださいと笑いかけて、また奥へと戻っていった。
それを微笑ましそうに眺めながら、先に食べていいよ、とシコクが促す。後輩二人はさてどう反応したものかと考えながらも箸をとった。
一度箸を取り、目当てのものを口に運んだあとはもう至福の時である。途端に顔をほころばせた二人に、シコクも頬をゆるめた。
「……結論からってさっき言いましたけど、シコクさんはカカシさんのこと好きなんですか?」
ふとコテツが話を戻し、イズモは咎めるような視線を送ったものの、彼自身も気になるのか、すぐにシコクへ伺うような目を向けてくる。
「一言では言えないけど、好きか嫌いかと言う話なら、まず間違いなく大好きだと答えるね」
「へえ。ちなみに理由は」
「尊敬してるし、目標だし、憧れだし、……うまく言葉には出来ないんだけど、まあ有り体に言えばそんなところ」
「カカシさん、すごいですもんね」
納得したようにうなずくコテツに、シコクもうなずきを返す。イズモはまだ少し気にかかっていることがあるような表情をしていたが、それを口に出すことはなかった。
理由。シコクがカカシを尊敬するに至った、理由。
それはカカシの生き方であり、天才と謳われたカカシの戦い方に他ならない。
写輪眼を得た経緯は知らないが、眼の傷が忍界大戦時代のものであることと、それが関係していることは知っている。カカシの肉体において最も目立つ傷痕であり、それはその分彼が優秀な忍であることも示していた。
異例の速さで上忍にまでのし上がったカカシは確かに忍として求められるものを持ち、資質も大きく、才能もあったろう。けれどそれだけではない。弛まぬ努力があってこそ、そして数々の戦いと喪失があってこそ今のカカシがいる。それは会話だけでなく、共にした任務での行動にも滲み出ていた。
そうして同時に、畏怖も感じていた。
失ったものの多さを競うことはナンセンスだ。生まれた以上いつか死ぬ。弱者も、強者も関係ない。それでも、そんな抗えない事実をそれとして割り切れるほど多くの忍は感情を捨ててはいないし、忍としての在り方の狭間で常に揺れている。
後悔は常に付きまとい、何かにつけ慰霊碑に足を運ぶ者もいれば、逆にほとんど寄り付かない者もいる。感情の整理の仕方と言うものは千差万別で一様には言えないが、普段飄々としてつかみどころのないカカシも例外ではない。それを、彼と関わるうちに、感じ取ってしまったのだ。
カカシの心に近しい人間は、今は世界のどこにも存在しないだろう。英雄と評された彼の父の死に様もシコクは耳にしているし、かつて彼がどんなふうだったかも聞き及んでいる。彼の心の内にあるものは、きっと彼が失ってきたもので、救えなかったものたちの記憶だ。
特別だから死んだのではない。死んだから特別なのだ。恐らくは。
だから彼にとっての特別はいないし、それ故に仲間や里そのものを愛せるのだろう。恋人と呼ぶ者はいないけれど、彼が愛しく思う多くのもののために彼は生きている。そんな生き方ができるのは、シコクが知るなかでカカシただ一人しかいない。
ああなりたいと思ったわけでは、けしてない。
シコクの抱いたそれは紛れもなく尊敬の念だったが、同時にそれは『ああはなれないな』と言う遠い存在との圧倒的な差の認知だった。
学ぶべき点は数えきれないほどある。だがその全てに対し、そんな風に生きたいと思わせるには、カカシのそれはあまりにも――
「シコクさん?」
「……ん、まあ、すごいよ、本当に」
落ちた思考を引きずり上げ、不思議そうにシコクを見る二人に曖昧に笑う。
シコクがカカシに憧れを抱いていたのはアカデミー時代からだが、実際にカカシと会い、会話をし、任務を遂行したことで、まるで蜃気楼のように浮ついていたシコクの感情ははっきりとカカシその人の姿をもって彼女の心の中に立っていた。そして、耳にするカカシの数々の武勇や日々の様子も、シコクの抱くものをより明確に形作るには十分だった。
それは言うところの恋心であり、カカシが普段そうしているような里の子供たちや仲間に向けられる慈しみの眼よりも限定的で、熱を持っていた。
好意を隠す必要はない。ただ、想いを告げるにはあまりにも遠い人だな、とシコクは思う。そしてそれゆえにいつまでたってもこの想いを思い出にできないでいるのだ。
「お待たせしました、焼きおにぎり茶漬けです。熱いのでお気を付けくださいね」
「わぁい」
再び沈みかけた思考の海から脱却すべく口にしたその声は、どこかの忍のように締まりがなかった。
ごちそうさまでした、と店を出た先で頭を下げる後輩に、シコクはどういたしましてと笑いかけた。通りには既に人の姿がまばらにある。直に通勤時間になり、賑わいを見せるだろう。
「じゃあ、イズモ。一度家に帰って小奇麗にしてくるから。八時ごろにアカデミーの資料室でいいかな」
「はい」
「じゃ、改めて解散。お疲れ様でした」
軽く手を挙げて、シコクは自宅への道を行こうとしたが、それを遮ったのはまたもイズモだった。
「あの、」
「?」
「確か、呼び名について今みたいに呼ぶようにって言ったのはカカシさんの方からでしたよね」
「うん」
それって、カカシさんはシコクさんのことが好きだからでは?
その考えはすんでのところで口から出ることはなく、イズモは慌てたように口元に力を込めた。
「イズモ?」
「いえ、引き留めてしまってすみません。またあとでお会いしましょう」
「うん」
軽く手を振ってからその場を歩き出したシコクに深々と頭を下げ、その背を見送りながら、イズモはもしそうならオレカカシさんになにか言われたりしないかなあ、いくら穏やかな人とはいえ、あの人の恋愛話なんて全然聞かないから予想もできないし……とひっそりとこれから先の身の振り方について思いを馳せた。
「おいイズモ、行くぜ?」
「……ああ」
コテツの声に、イズモは軽く頭を振って歩き出す。朝焼けの晴れた空は澄み渡り、木ノ葉茶通りを温かく覆っていた。
2011/08/17 : UP
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