年越しのふたり

「ん、……ふぁ、あっ」
 とん、とん、と優しく揺さぶられる。じくじくと、そうされる度に滲む快感に身を捩ると、彼の大きな手で腰を掴まれて、また一突き。
「あぁんっ」
「逃げなや……甚振りたくなるきの」
 そんなつもりはない。もどかしいほどに気持ちいい感覚にどうしていいか分からなくて、もう、快感を追いかけて腰をくねらせているような気がしているくらいなのに。
 ベッドのスプリングを使っての優しくも意地悪いその律動に、自分から腰を動かしてしまう。それを、これ以上ないほどに嬉しそうに見下ろす以蔵さんは、酷く嗜虐的な顔で、けれどその目が――私の胸に落ちているのを見るに、それはきっとスケベなカオなだけなのだろう。
「わしの動きに合わせてふるふる揺れゆう、おまんの乳はまっことそそるぜよ」
「……っ、それは、っふ、あ、よかっ……んっ!」
 ゆさ、ゆさ、とさっきから何を楽しそうにしているのかと思えば。
 呆れたくても、緩んだ表情のまま不埒な唇に乳首を捕らえられ、的確に私を気持ちよくしてくる彼に言葉が続かない。
 一方で、まるでこのじれったい快感を味わうような腰つきに耐えかねて、はしたなくおねだりの一つでもせずにはいられなくなった頃、不意に以蔵さんが動きを緩めた。
「……もうすぐ年が明けるがよ。せっかくじゃ、除夜の鐘に合わせて動いちゃろか」
「何言ってるの、もう」
「わしと一緒に清めた先から煩悩まみれになりましょうや」
「……ばか」
 思わず、他にどういっていいか分からなくてそう言うと、何が面白いのか以蔵さんは私の上でくつくつと笑った。
「新年に浮かれちょる奴らがこじゃんとおる中で、わしらだけ夢中でサカっちゅうがは……盛り上がるろう?」
 ゆるゆると彼の手が私の肌を這う。皆が新年を祝う言葉を交わそうと時間を意識しているのに、私たちはお互いに夢中になっている。――たしかにそれは、言われてみればより一層えっちな気がしてくるかもしれない。
「わしだけ見て、感じとうせ」
「……いつも、見てるでしょ」
 答えると、ヴヴ、と携帯が立て続けに鳴った音に意識がそれた。すぐさま顎を掴まれて、目を細めた彼に捕まる。腰をぐい、と押し付けられて、遠のいていた性感が一気に戻ってきた。
「んっ、」
「――初詣、行けるとえいのう」
 まるで他人事のように囁かれた言葉に、ヴヴ、と断続的に震える形態の音を拾いながら、年が明けたであろうことと、今から抱き潰されるであろう未来に思いを馳せる。
 溜息として漏れた息は、全て彼の口の中へ吸い込まれていった。

2019/01/07 公開 2025/04/26 UP

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