この話には性描写が含まれるため、18歳未満の方の閲覧を固くお断り致します。

クールな彼のホットな一面

 店仕舞いをして、店長の許可を得て奥のバックルームで作業に入っていた。不隠れはホロウに関する神秘についての情報を集めており、その一環で手に入った珍物について調べるためだった。
 エーテル侵食度も問題なく、複数人の手に渡っても問題がなかったため不隠れへと転がり込んできた小箱。
 詳しくは言えないがパパゴホロウで取得されたもので、中に何が入っているのかは分からない。用途も不明。振っても音はせず、重みも箱そのものが重いのか、詰まっているらしい中身が重いのか測りかねる不思議な感覚。材質は石と金属のようだが、具体的には不明。ただ、寄せ木細工のように恐ろしいほど成功に作られたそれは、間違いなく一級品だという確信があった。
 所定の手順を踏めば開けられそうで、手元で弄ぶようにして開け方を調べているうちに、元々その夜に合流予定だった馴染みの客兼恋人が裏口から尋ねて来たため応対。
 彼女と共にバックルームへ戻り、店を後にするため片付けようと小箱を手に取った瞬間、彼女と共に窮屈な小部屋にいた。

 ――というのが、ジンジャーくんから聞いた『こうなった』経緯である。
 明かりもないのに何故か視界ははっきりとしていて、妙につるんとした八方の壁に二人押し込まれている。
 この奇妙な状況への説明を求めて得た回答がそれであったので、私は早々に降参した。
「だめ。私そういうの門外漢で」
「俺も別に怪奇に遭遇するのが専門ってわけじゃないんだが……。まあ、ホロウの中に飛ばされるようなことがなくてよかったよ」
「こんな一人でもなかなか息苦しい狭さで、出口も脱出方法も分からないのに?」
「少なくとも俺とあんたが揃ったからこうなった可能性が高い。だったら、二人でどうにかすれば戻れる可能性はあるだろ」
 落ち着いているジンジャーくんに惚れ惚れしてしまう。普段から冷静だなとは思っていたけど、こんな緊急事態でもいつもの態度を貫けるのは才能だと思う。
「戦う方法さえあればエージェントに転向できるねえ……」
「バカ言え。あんたがいるから平静を装ってるだけだっての。俺が巻き込んだようなもんだしな」
 頭が痛い、とでも言いたげな声色だった。
 私たちは今、三角座りをする私をジンジャーくんが後ろから抱くような形で座っている。
 思うように動けない以上、長居は良くない。じっとしたままでは身体はどんどん辛くなるものだし、床ずれなんて起こしてしまえば命も危ない。
 妙に明るいし、息だって一向に苦しくならない。そんな不思議な空間だから、もしかするとそんな危険はないかも知れないけど……危なくなってからでは遅いし。
「ジンジャーくんが何かしたわけじゃないでしょ。それに、今まで誰も変な目に遭ってないなら、予測出来ないことだしさ」
「ありがたい言葉だけど、あんたはちょっと寛容すぎないか」
「まあジンジャーくんとだからさ」
 知らない仲どころかこれから深まっていく仲なのだから、私としては別に。大体、ジンジャーくんがこういう神秘を集めるお仕事をしているのを知っているんだから、今更だ。
 ため息さえつかなくなった彼は、きっと照れているに違いない。そう思って上半身を捻ろうとすると、彼から悲鳴が上がった。
「うわ、ちょっと、動くなよ」
「だって、何も言ってくれないんだもん」
「それは悪かったけど、今動かれると、」
 歯切れの悪い言葉に首を傾げる。相変わらず顔は見えない。
「あ、そっか。下にずれれば良いんだ」
「は? っ、あ、こら、だから動くなって」
 お尻を前にずらして行くと、やっとジンジャーくんの顔が見えた。ちょっと赤い。やっぱり照れていた。
 けれどその顔も、すぐにあきれ顔になる。
「はぁ……」
 ため息が落ちて、ほっぺたをむに、と摘ままれた。心なしか彼の猫耳がぺしゃんとしている気がする。
「あんた、ほんとこんなになっても楽しそうだな」
「まあ、流石に出られるものだと思ってるからね」
「その心は?」
「箱は見るからに人工物で、ならこういう事態になったことは初めてじゃないはず。なのに中は空っぽなのは、皆脱出できたと見る」
「エーテリアスになってないだけで、消えてなくなる可能性だってあるだろ」
「そうだったとして、こうなった以上くよくよしても仕方なくない?」
「まあ、……」
 ジンジャーくんの声が途切れる。やっぱり不思議な空間のせいで、顔がよく見えた。光源が上にあるなら、逆光になるはずなのに。
「なあ、ところでそろそろ頭を、」
「あ」
 彼の言葉を遮って、私は彼の頭の向こうに何か文字が書かれているのが見えた。――そして、それが旧文明時代の一つの言語だと言うことも、分かった。
「……どうした?」
 固まる私の様子に、ジンジャーくんの眉が寄る。
「いやあ、その、脱出方法が書かれているのを見つけまして、」
「マジか!」
 でかした、と喜色を浮かべるジンジャーくんに、本当に申し訳ない気持ちで説明する。
「ただ……旧時代の文字で書かれてて、本当にそのまま読み上げるから意図を一緒に検討して欲しいんだけど」
「ああ、勿論だ」
「えーと、ジンジャーくんの丁度頭の後ろくらいの位置に『お互いに手で愛を伝えないと出られない部屋』って……書いてあるんだけど」
「……なるほどな。旧時代の文化的な言い回しだったら分かりようがないか」
「慣用句ってホント意味不明なのがあるからね……ただ、いくつか候補はあって」
「うん?」
「まずは、手話。手話で告白をしあう」
「手話って、ハンドサインの?」
「そう。代替音声系技術が確立する前に使われてた方法で、言語と同じで国ごとに違ってた」
「……それだと膨大すぎるし、パターン化できなくないか? もっと具体的で、限定的な行為な気がするけど」
「そこなんだよね」
 一度言葉を切って、息を吸い込む。
「詩的な表現の可能性が高くて。この言語の文化はかなりロマンティックな表現が多くて、なんていうか、どうも手に関するものは官能的な文脈を多分に孕んでるんだよね」
「……。それで?」
「恐らく、意味するところは『性的愛撫』みたいなことなんだけど……ただ……えっと、つまり、『手でする』範囲となるとその、お互いのアレソレを触り合いっこするみたいなところまで含む可能性があってですね」
「なるほどね」
 流石に直球で口にするのは恥ずかしくてもごもごと口ごもる。けれど、必要な部分はちゃんと言えたし伝わった。
「二人でこんなとこに押し込まれたのもそのせいってわけか」
「たぶん?」
 ジンジャーくんが息をつく。そして、いつもよりちょっと熱のこもる眼で私を見下ろした。
「それで? 試すのか?」
「まあ、唯一見つけた手がかりかもしれないし、やる価値はあると思うけど……」
「けど?」
「……その、ジンジャーくんはやる気がおありで……?」
 今でこそ可愛いところもあると知っているけれど、彼は普段、結構そつがない。淡々としてるし、年頃の男の子のようにあからさまに興味津々だったりという感じもない。まあ、恋人だなんて言う立場を許してくれたのだから欲はあるのだろうけれど……。
 と考えていると、むっとした顔の彼に気づく。
 やば。そんなにマズいこと言ったかな。
「あんたは、男がどんなに単純か分かってない」
「へ……」
「さっきからあんたの柔らかい身体がぐいぐい押しつけられてて、今だって股間に近い場所にあんたの顔があって、やる気があるどころかずっと上がりっぱなしなんだけど」
 ジンジャーくんの指先が、犬猫にするみたいに私の顎を優しく撫でる。
 彼に口にされたことで、今自分がどんな体勢なのか、改めて自覚してしまった。
 さっきあまり動くなと言われたのも、きっと、
「……で? 俺はいいけど、あんたは?」
「へっ」
「合意は取っとかないとだろ」
 律儀である。待てができるのはイヌ科の特権じゃなかったか。
 そんなバカみたいなことを考えながら、私はジンジャーくんの指先が頬を撫でて、優しく耳を揉み始めるのを感じながらぎこちなく頷いた。
「だ、だいじょうぶです」
「はっ、どっちの意味だよ」
「できます! してもらってだいじょうぶです!」
「うわうるさ」
 ……既に彼の指先から色々伝わってくる気がするって言ったら恥ずかしがってくれるかな?!


 そんなわけで始まった脱出条件を探る試み。といって、私にはそういうテクはないので、一度ジンジャーくんにお任せすることになった。
「いいのか? 触りたいように触るけど」
「うっ、うん。や、やさしく触っていただけると嬉しいですね……」
「あんたさっきから敬語ばっかだぞ。緊張するとそうなるのか」
 ふ、と笑った彼にドキッとしている間に、ジンジャーくんの手が胸元を這いだした。マッサージ店で似たような位置からデコルテマッサージをされたけど、状況と相手が違うだけでこんなにも緊張するものなのか。
「普段から思ってたんだよな」
「?」
「こんな胸出して、誘われてんのかってさ」
「あっ、」
 すり、と下着の上から胸の先をつま先で擦られて、身体が跳ねた。仰向けになっているせいで、指の動きに合わせて胸がぷるんと揺れる。
 ……確かに今日はそういうこともあるかもしれないと思って、短め丈のキュロットスカートに、フロントホックつきのボレロと、キャミソールといういわゆる隙だらけコーデというやつにしてきた。そのために車に乗ってきたし、全くその気がないなんて嘘は言わないけれど。
「ふっ、普段から、って、んっ」
「二輪の時だって、店に入ったらぱっつぱつの革ジャンのジッパー下ろして、柔らかそうな胸が革ジャンから溢れて来るみたいに出てきてさ」
「あっ、それは、ぁ、しかた、な」
「そうだ、仕方ないことだよな。だからいちいち意識してた俺がしょーもないって話」
 言いながら、ジンジャーくんの指は止まらない。キャミソールの上から執拗に乳首に触れてきて、その触り方が爪先や指の腹だったり、摘まもうとする動きだったりでどんどん変化していく。甘いのに微弱な電気みたいな快感がその度に身体を駆け抜けて、下腹部に溜まっていく。
 気づけば膝をすり合わせていて、露わになっている太ももが急にいやらしく見えた。
 目を伏せて、顔を背ける。
「うっ」
「んあぁっ」
 ……後頭部に、明らかに熱くて硬いものを感じた。同時にジンジャーくんの手が力加減を間違えて、強く胸を掻かれて背がしなった。
「急に動くな、って」
「だって……」
 上からジンジャーくんの声が振ってくる。……彼の顔が見たいと思ってこの体勢になったのに、その所為で彼から私の顔も丸見えだ。
「なに、恥ずかしがってんの」
「やっ、ん」
 開いた胸元、キャミソールの縁を彼の指先が滑っていく。乳房に少しだけ沈み込んで、少しずつ中に入ってくる。
「あんたのそんな顔、初めて見るな」
「……誰にでも見せるわけ、ないでしょ」
「それもそうだ」
 一転、ジンジャーくんの声は楽しそうだ。
 手が、いよいよキャミソールと中のブラカップの内側へ入りこむ。こんな狭いところでお互いホックを外す余裕もなくて、だから、下乳をすくい上げるようにして引きずり出された。
「んんっ」
 寒いとは思わなかったけれど、服の外に出されて乳首がぷっくりと勃ちあがる。そこを彼の人差し指が頭を撫でるように擦ってきて、私の腰はびくびくと跳ねた。
「ぁ、あ、あっ」
「っ、く」
 私の身体が揺れるごとに、彼の……私の後頭部に感じるものに刺激があるんだろう。喘ぐのをこらえるような吐息に、かっと身体が熱くなる。
 私ばっかりされてても、脱出はできない。
 こくり、と自分の喉からやけに大きな音がした。
「わ、わたしも……さわって、いい?」
「……ん、」
 ジンジャーくんが身体をずらして、位置を変える。片膝は立てたまま、もう片方は地面に寝かせるようにして、私はその内股で膝枕されているような状態だ。半ズボンを寛げる音が間近で聞こえて、ついそちらを見てしまった。
 ジッパーを下げたところから、黒の下着が突き出している。その、その所為で先端のシルエットが丸見えで、思わず声を上げそうになるのをこらえた。
「あんま、見られると恥ずかしいんだけど……」
「ご、ごめ、」
「まあ正確に言うと、余計にアガってんのが丸見えなのが恥ずかしいっつーか……自制が効かなくなりそうだから、適度に目逸らしてもらえるとありがたいかな」
 そうは言われても、目が離せない。初めてまともに見るのだ。そりゃ、巷にはアダルトなコンテンツが沢山あって、男女問わず性器の露出もしているけれど――じ、ジンジャーくんのは、当然ここにしかないわけで。
「……えと、パンツの上から触ったら良い、の?」
「あんたが嫌じゃないなら。流石にいきなりナマをこの距離で見せられても怖いだろ、」
 ジンジャーくんの気遣いに、首を横に振る。大丈夫と言ってそろそろと彼のパンツの隙間から中のものを取り出そうとすると、ジンジャーくんがゴムごとずらしてくれた。
「わ……っ」
 ぶるん、と頭を揺らして、本物が飛び出てくる。赤くて、太くて、血管が浮いていて……なんというか、つるすべなジンジャーくんのイメージとは違うものが、鼻先すれすれにある。
「と、棘はついてないんだ」
「黙りこくって何かと思ったら……ネコ科シリオンへの偏見だぞそれ」
「だ、だって」
「まあそりゃ、人間タダでさえ性交痛なんてものがあるんだから、激痛なんかお断りだろうけど」
 おっかなびっくり、目の前にそびえる彼のものに触れる。触り方のせいでこちらに傾いて、ぺち、と鼻先に当たった。
「わ」
 濡れてはいないけど……なんというか、湿気を感じる。親指と人差し指で輪っかを作るようにして、後の指も全部添えると、そろそろと手を動かしてみた。
 体勢の都合上、逆手? になってしまうのはご容赦願いたい。
「ん、っ……は、その触り方、くすぐったいな。もっと力入れてくれ」
「い、痛くないの?」
「あんたそんな怪力じゃねえだろ。大丈夫だから」
 言われて、少し力を込めて扱く。ぬるん、ぬるんと皮が動いて、上からジンジャーくんの吐息が落ちてくる。
「っ、はぁ、……っ、ん、ぁ」
 色っぽくて低い声が、掠れて響く。ドキドキしながら手を早めると、先の方から透明なものが垂れてきて、あっという間に私の手ごと濡れてきた。
 添えていただけの薬指を先端の真っ赤な膨らみに擦り付ける。と、彼の内股がびく、と跳ねた。
 自然、顔を見ようと目線が動く。
 見上げたジンジャーくんはすぅすぅと息を殺しながら、顔を赤くして快感に堪えていた。
「っ、あんま、見るなって……」
「気持ちいい?」
「ん……それもある、けど……っ、あんたがエロい顔でこっち見てくんのが、キく」
 びく、と握ったものが跳ねる。彼の力の入れ加減で連動するらしい。
 手の甲で覆われた彼の口元から「ふ、ふ、」と息が漏れて、懸命に取り繕おうとしているその姿が、凄く可愛くて。――ぎゅっと握り直して、手を早めた。
「うっ、あ、ちょ、っと、」
 先端は敏感だと聞くから、滑りを利用してうりうりと指先で撫でると、彼の内股にまた力が入って、足が跳ねた。手首を掴まれる。
「~~っ、それは、っ、ちょ、っと……」
「痛かった?」
「いや、……うん……苦手、かもな」
 彼らしくないほど目がうろうろとして定まらない。嘘ではなさそうだから、素直に言うことを聞こう。
「ごめんね、ゆっくりするから」
「ん、……~~っ、うぁ、あ」
 パンパンになったのに、先走りでぬるぬるなジンジャーくんのものを握って、ゆっくり下から上に扱く。その、セックスって女の人がきゅうきゅう締め付けた方がキモチイイらしいし、手でそれを意識する。
 掴まれていた手首の力が弱まり、離れて私の上を彷徨う。彼の手は私のもう片方の乳房も露わにすると、乳房ごと揉みしだいた。強い力ではないけれど、指の股で乳首を挟まれているせいで気持ちいい。
「んっ、あ、やんっ」
 甘えるような声が自分の喉から出ていく。狭い中で足の裏を壁につけて、募る快感へのもどかしさに身体をよじる。胸だけじゃなくて、ジンジャーくんにも触って欲しい。下着の中の、秘めた場所を。
「も、ジンジャ、ぁく、んっ、胸、ばっかりっ」
「はあっ? あんただって、十分、気持ち、っ良さそうに、……してる、だろっ……!」
「やあんっ、やっ、やだっ……下も……さわってよぉ……」
 もどかしくて焦れったくて、なのにまともに動けないから口ばかりが先走っていく。
「今日が初めてなのに、キスだってまだで、……キスして、好きって、言ってほし、」
「っ、あんま、可愛いことばっか、言うなよ、!」
「きゃぁんっ」
 きゅう、と乳首をつねられて、腰が跳ねる。下腹部がきゅんきゅんして、刺激が欲しくて腰が浮く。手の中でびくびくと彼のものが跳ねて、熱い白濁が胸に落ちる。
「く、ぅ……っは、まだ出られないのかよ……っ、おい、触るぞ」
「はぁんっ」
 彼の手が胸を離れて、ウエストから直通で下着の中をまさぐり始める。
 恥丘を揉みしだかれたかと思ったら、下生えの中の割れ目に沿って指が奥へ奥へと潜って、それで、
「あ、っ」
「すげ、ドロドロ」
「やぁ……ん、いわ、ないで」
 何度も割れ目に指を這わされて、愛液で潤んでいた場所がジンジャーくんの指先に暴かれて、あっという間に蜜を広げられていく。
 クリトリスを優しく指の腹で撫でられて、両膝がガクガクと震える。
「ん、んっ、はぁ、ああっ」
「かわい……」
 指使いが激しくなる。少し骨張った中指が潤んだ肉の中に潜り込んだかと思ったら、一、二回出し入れされた後あっという間に薬指も増やされて、それさえあっさりと受け入れてしまう。親指の側面でギターの弦を弾くみたいにクリトリスが引っかかれて、自分のものじゃない指に蹂躙される。
「やっ、あ! はげし、あ、あっ」
「どんどん濡れてくるな……あんたも聞こえてるだろ? 凄い音」
「やだぁ……っ、言わない、でって、ば、ぁ、あ!」
 中に入れられた指が私の反応を探るように動きを変える。二本の指がタイミングを少しだけずらして出し入れされて、くちくち、ぐぽぐぽと音を立てているのが分かる。入り口を苛まれるだけで快感にひくひくと動いてしまうのに、クリトリスを掠めるように親指まで動くから、もう勝手に腰が動いて、快感から逃げたいのか、もっと欲しいのか分からない。
「……ん、こうか?」
「ああっ、だめ、やっ、それっ」
 気持ちよさの決定権をクリトリスが握っていると見抜かれた後は早かった。空いた方の手で胸を弄られて、上からも下からも快楽を送り込まれて、私はあっという間に絶頂の予感に身体を強張らせて……
「――あ、あぁっ……!!」
 きゅっと彼の服を掴んで、何度も中が収縮で痙攣する感覚と共に、強く目を閉じた。

 瞼の裏まで貫通するほどの光と共に、身体が弛緩して自由になる。足が伸ばせる。踵と背中に柔らかな絨毯の感触を覚えて目を開けると、何度か入ったことのある不隠れの薄暗いバックルームだった。
 立派な革張りのソファと、重厚なデザインのローテーブル。その間に私たちは閉じ込められた姿勢と変わらない状態で呆然としていたのだった。
「は……出れた……」
 ほっとした声で呟いたのも束の間、ジンジャーくんが勢いよくデスクに置かれた鞄をひったくった。私を膝枕したままで、鞄の中を漁る。
 そして彼が手にしたものを見て私は声を上げた。
「はっ?!」
 ソレは紛れもなく避妊具で。
「なにっ、それ、ジンジャーくんまさか他の誰かともこういうこと、」
「そっちかよ! んなわけないだろ、今日あんたが来るって言うから準備してたんだよ!! いつどこでどうなってもいいように、わざわざ一個一個ちぎってケースに入れてな!!!」
 ざわついた胸は明け透けな告白でつるりと収まる。調子の良い私は恥ずかしさを押して即行で訂正してくるジンジャーくんに胸がきゅんとしてしまった。すき。
 当の本人はヤケクソ気味にウェットティッシュで膨らんだままのものを綺麗にしていた。几帳面すぎる。
 呆けて見ていたら、いつの間にか準備が終わった彼がギラギラした目でこっちを睨んでいた。
「暢気に待ってるってことはいいんだよな?」
「え、っと……もう脱出したじゃん! それにここお店だし、」
「そんな顔して、説得力ねえぞ」
「なん、そんな顔って、」
「エロい顔」
 動きを制限されなくなった今、彼を阻むものはない。
 後頭部から彼の内股がなくなったかと思ったら身体をまたがれて、ボトムを下着ごとずり下ろされた。
「ちょ、ま、あの箱っ 先にどうにかした方が、」
「こんな茹だった頭でまともに考えられるとでも?」
「んっ」
 噛みつくみたいに唇に吸い付かれる。いや、しゃぶりつかれるといった方が正しい。
 ジンジャーくんの唇が、まるで食べるような勢いで私の口を覆って、熱い舌先が唇をなめ回す。
「ん、ちゅ、む、んっ、ぷは、ぁ、あ、んんっはぁ、んっ」
 一瞬落ち着いたと思った熱がぶり返してくる。古物特有の香りが鼻呼吸と共に入って、
まざって、ぼうっとしてきた。
 ぺろ、と最後にひと舐めして離れた口から、形の良い歯が覗く。
「……で? 『キスして、好きって言って』、だっけ」
「っそれ、は」
「どっちも頑張るから、あんたも良くなってくれよな」
「――~~っ!」
 しっかりと避妊具をつけた熱いものが、さっきまで彼の指で気持ち良くなっていた場所に何度も擦り付けられる。
 茹だっているのは私の頭も同じだ。
 だって、そうされるともう、彼が入ってくるのを待つことしか考えられなくなってくる。
「あ、ぁ、ん……ってんちょ、さん、は、」
「いない。施錠は俺に任されてる。ふっ……いいから、ちから、ぬいて」
「んんっ……」
 ちゅ、と宥めるように唇に吸い付かれて、彼の言葉の通りに力が抜ける。
 そうするとじわじわと慣らされていたものがぬるりと入りこんで、私は背をしならせた。
「あぁ……っ」
「……っ、は、ぁ」
「はい、った、の?」
「先っぽ、だけな」
 嘘。
 もうかなり大きいものが入ったはずなのに。
 そう思うのに、ジンジャーくんが腰を微かに揺らして、じわじわと奥へ入ってくる感覚がある。
「お、っき、ぃ」
「っ」
 どこまで入ってしまうんだろう、と思っていると、肌が重なって、ピタリと太ももの前と後ろが重なる。
「あんま……っ、煽るな、よな」
「だって、」
「はぁ、っ、なか、気持ち良すぎ、る」
 険しい顔で何かを堪えようとする彼の服を引っ張る。
「動いて、いいよ。気持ち良くなって……いっぱい、んっあ!」
 最後まで入ったと思ったのに、更にそこからぐいぐいと腰を押しつけられて、身体の奥で快感が弾ける。
「あんっ……! じんじゃー、く、」
「は……っ、キコさん、かわいい」
 名前を呼ばれて、きゅうっと身体が反応する。
「んんっ」
「好きだ」
 囁かれて、繋がった場所からじわじわと気持ちよさが滲む。そのままゆっくり律動が始まって、さっきの比じゃないほど感度が上がった私はあっという間にイってしまった。
キコ、」
「あ、だめ、だめぇ、っひ、ぁあ……っ!!」
「ん……!」
 上擦って行く私の声にあわせてか、イく前後でジンジャーくんの動きが止まる。しっかりと繋がったまま、彼がじっと見下ろしてくるのが分かる。
キコさん、」
「も、ばかぁ……こんなときばっか、名前で、」
 視線だけでまたゾワゾワしてくる。私が彼を見つめ返すと、ジンジャーくんは目を細めた。
「はぁ、イキ顔可愛すぎて収まんねえ」
 言いながら、毛足の長い絨毯の上でまた腰を揺らし始める。甘い快感にじくじくと身体を苛まれながら、私は待ったを掛けた。
「っん、ぁ、あんっ、はげし、いっ」
 さっきまでゆっくりだったのに、今度は好き放題に打ち付けられる。まるでもう私の良い場所なんてとっくに知っているとばかりに奥や入り口付近を小突かれて、私は力を入れることもままならないまま喘がされる。
「やぁっ、も、なんでそんな、止まんないのっ」
「あんたが可愛いから、だよっ」
「きゃうぅっ!」
 胸に噛みつくように吸い付かれて、甘い悲鳴が飛び出ると共に奥がきゅうっと収縮する。ジンジャーくんは一度呼吸を整えるかのように動きを緩めると、眼鏡をローテーブルへ置いて私を見下ろした。
「あんたがへばるまでヤる」
「へ……」
「無理。途中で止まれないから」
 本気で嫌になったら殴るなり蹴るなりしてくれ。
 そう言ってまた揺さぶられるような律動が始まる。
 ……そう言われて、できたら苦労しないんですが。
 私の言葉は、彼のキスで塞がれて胸の中に消えて入った。


 それからは大変だった。
 キスの合間にずっと好き、好きだ、可愛いって言われて、ずーっと気持ちいい目にあわされた。がっつかれるままに盛り上がって、流石に抜かずの何発目かで違和感を覚えた。彼曰くつけているのはシリオン用の避妊具だから問題はないと言われたけどそこではなく。
 全然萎えない彼になんとか力を入れてソファに逃げようとしたら、掠れた低い声で「ご協力どーも」って捕まって、そのままバックで挿入れられてまた始まって。後ろから胸を揉まれて、耳を食まれながら掠れた声で軽い言葉責めまでされて。
 まさかジンジャーくんがあんなにお盛んだったとは思わなくて、その後ソファに私が座る形で対面になり、もう一回が終わっていい加減疲労が勝った頃に「もうっ、無理だってばぁ」とどうにか肩を押しやってようやく引いてくれた。
 少しだけ熱のこもった眼でじっとりと見つめられたけれど、私がそれ以上受け入れる気がないのが分かったのか、ジンジャーくんは「ウチ、泊まるだろ」そう言って、元々そのつもりだった片付けをし始めた。……冷静さが戻ってきた彼にちょっと寂しい気分になったのは、流石に理不尽か。
 私も丸出しだった胸……に飛び散った彼のものを拭って、身支度を調えてすぐに腰を抱かれて、彼の力の強さにまだドキドキしたりして。
 小箱を安置してお店の施錠を済ませると足早に彼の家まで向かって――そこでようやく彼は私の腰から手を放した。
「風呂沸かしてくる」
 そうい言って離れた彼を引き留める元気はもうない。流石に二人ともへとへとのへろへろだ。
 当然、お風呂を借りた後に「もう一回」とはならなかった。流石にね。
 最初は仕事終わりに恋人としての時間を持とうって話で……まあ、お互いそれなりに準備してきたこともあってお泊まり込みで予定通り、に収まったんじゃないだろうか。
 寝入る頃にジンジャーくんの喉がごろごろと鳴り始め、すりすりと頬ずりされたのはかなり可愛かった。私の中で延長戦が発生しそうで本当に危なかった。仕掛けたが最後、形勢逆転してひいひい言わされることになるのは目に見えている。

 ちなみに、次に不隠れに行ったときにはあの箱はなくなっていて、彼に聞けば
「あんな物騒なモンこんな場所に置いとけるか」
 と素っ気なく返された。うーん、まとも。

2026/01/14 UP

メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで

全く関係ないおまけ

「なんか聞いた話によるとイヌ科とネコ科のシリオンはエッチの時、特にバックが好きで、それは相手を受け入れるために尻尾を横に避ける仕草がめちゃくちゃエロいからみたいな話を聞いたんだけど」
「ぶっ は? いきなり何の話……」
「ジンジャーくんもそうなの? つるつるは趣味じゃない? 私あなたの恋人なんですけど!」
「一応言っておくとまあ、好きな奴は多いかもな。そういうつるつるのヒトだってやれ髪を結って見えるうなじがどうの、髪を耳に掛ける仕草がどうのって聞くが」
「あー まあでもそれは男性視点だから私はあんまりピンとこないっていうか、」
「あとあんたがオオカだのイヌだのの男シリオンのもふもふした毛並みを熱心に見てたの俺知ってるからな」
「はっ?!」
「悪かったな、もふもふでも筋骨隆々でもなくて。俺、あんたの恋人なんですけど」
(し、嫉妬~~っ!)
「じろじろ見るのも不躾だしセクハラで訴えられないようにほどほどにしとけよ」
「可愛い意趣返しだと思ってたら急に辛辣!」

年齢確認

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