この話には性描写が含まれるため、18歳未満の方の閲覧を固くお断り致します。
ブラック・ルシアン
本当に、本当に念のためドアスコープで覗いて相手を確認したオレはえらいと思う。
郊外でチャンピオンなんかやってる相手にこんなお上品なドアなんか一撃で伸されて終わりだろうが、散々ノックノックで密なやりとりをして互いに下品な言葉で煽りあった後だ。ここでキャンセルは絶対にない。オレの沽券に関わる。
「……どうも、」
「久しぶりだな。この数年、音沙汰がなくてヤり捨てられたかと思ったぜ、ダーリン?」
チェーンを外し、出迎えたドアの向こう。サングラスを傾けて、甘い声でオレを呼ぶその人に返す言葉は一つしかなかった。
「……すみません……」
「そいつは何に対する謝罪だ? 事と次第によっちゃ、今日のプレイはだいぶハードになるが」
すい、と一歩部屋の中に踏み込まれて、そのままドアが閉まる。目の前でチェーンを掛けられ、腰を抱かれた。男相手でも様になるからズルい人だ。
「ああ、そうそう。ハメ撮りの件だが、当然シークレットだ。ま、今回はお前のデバイスで記録すんのは諦めてくれ」
「……ハイ、それは、もう」
「おいおい、何固くなってんだ。俺はここに詰めに来たわけじゃねえんだぞ、シュウ」
柔らかい声に優しい声かけ。でも分かる。目が全然笑ってない。
ギラついた間接照明だけが点いた部屋の中、サングラスを外したその人はノックノックじゃ伝えるはずもないオレの本名を迷いなく口にして――大判のタオルを二重に敷いたベッドへとオレを押し倒した。
例の大災害でなにかしらを失ったヤツは珍しくない。家、家族、仲間、友達、金……それでもどうにか生きている。旧都陥落の大災害は未だに深い影を落としているが、どうにか今も生きているのはカリュドーンのお陰だった。今はカリュドーンの子になっているが、まあ同じだ。
オレは郊外で拾われて、面倒を見てもらってた。手癖が悪くないことを見込まれて、計算を任されたこともあった。まあ、鈍臭かったってことなんだが。下っ端も下っ端だったけど、作業を任されるのは嬉しかった。ビッグ・ダディは立派な人で、あちこちから色んなヤツをピックして仲間に加えてた。
ピンピンに尖ってたビリーの後釜で入って来たのがライトだった。ビリーと違って生身の人間で、あちこちに傷があった。見えるものも見えないものも。
看病を任されたからしばらく看て、なんで引っ張ってきたのかとダディに聞いたら、世代交代の下準備だ、と言われたっけ。
「こいつはすげえぞ。戦ってるところを見りゃ一発で惚れる」
その時既にライトの拳を見出していたダディの言葉は本当だった。いや、ダディはそんなつもりで言ったんじゃないんだろうが……悪絡みされてすわリンチかってタイミングで助けられた時、オレはダディの言葉を思い出していた。
迷いのない拳がオレのために振るわれた瞬間、身体と心を縛るような暗闇が全部引き裂かれて、払われたような。
そんな気がしたんだ。
「そりゃあ嬉しいか嬉しくないかで言やぁ嬉しいが……せめて合法的に酒が飲めるくらい、もうちょいデカくなったら考えてやる」
体の良い断り文句も、言葉そのまま受け取る程度にはスれてなかった。まあ、あのシーザーができあがる環境だからそうおかしなことでもないだろう。
そう。オレは思春期を迎えて猿みたいにライトで抜きまくって、その挙句馬鹿正直に告白したのである。
本当にバカだったなと思う。昔は鈍臭いと言われて納得いかなかったが、今なら分かる。頭からしてもうトロくさかったんだと。
その辺に落ちて濡れて乾いてしなしなカピカピになってるエロ本を参考書にする年齢だったし、自分が性欲フルマックスだったのもあって、男なんかいつだって誰だってヤりたい盛りだと思ってた。
けど、ライトはまるで落ち着いて大人で優しくて、だから、オレの目は確かだったんだけどそれはそれとしてオレは振られた。
焦ってたのもある。オレはその時まさに男の身体になるところで、声変わりをしかけていて、なよっちい見た目だったらワンチャン抱いてもらえるかもしれないって。ケツの穴自分で柔くしながら思ったんだ。声変わりしてヒゲが生えたら「ない」になるって。
流石に下の毛はつるつるだと子ども過ぎて自分的にもナシだったが、すねとか胸とかがふさふさになったら駄目だって言う自分の中の枠があった。これも今思うとエロ本の影響だと思う。グラビアじゃなくて漫画だったし、漫画の中で男に抱かれているのは、男も女もつるつるだったから。
振られたんだなあ、と思ったのはライトの言う『合法的に酒が飲める』年回りになってからで、その頃には沢山の女の視線を掻っ攫っていくライトは、チャンピオンなんかよりもずっとずっと遠い存在になっていた。
一方のオレは、腕っ節も頭も良くなかったから、アダルト動画サイトでアナルオナニー動画を投稿して再生数を稼いでたってワケ。
性欲の権化みたいなレベルでシてたオレの前に、インターノットの『裏アカ』界隈なんて世界が広がったら、そりゃそーなる。
お陰で有料コミュニティサイトでチャンネルを持って、食い扶持には困らなくなって、庇護も……まあ保証人的な意味でならともかく、必要なくなって、独り立ちすることになった。ダディをはじめ、世話になった人の挨拶回りは一通り済ませて、話も通して、最後に酒の入ったライトに一度だけ『抱いてくれ』って頼みに行った。
ダメ元だったし、でも、あんなにモテるライトだから、男くらい抱いたことあるんだろうなと思って。
そうしたら、俺に酒を一杯分奢ってくれたライトが言ったんだ。
「……ま、お前のことだから遊びじゃねえとは思ったが……そうだな、場所を変えるか」
夢かと思ったね。
やり方は分かるか、とか、色々聞かれたけど、全部準備して織り込み済みで誘ったんだと言えば、後は何も確認なんか必要なかった。
ライトのデカい身体が覆い被さる感覚。深く繋がって、肌が密着する心地よさ。耳に響く吐息。何度も吸い付いてくる唇。
全部覚えている。今でも一番のオカズはそれだ。
中に出してくれと懇願して、ライトの腰を足で掴んで、熱い身体から迸るものに打ち震えた。
ライトがオレで勃って、出してくれた。
その思い出だけで、やっていけると思った。実際、やっていけていた。
――今日、こうして詰問されるまでは。
「……わざわざ捨てアカなんて作ったんだな」
「あ? ……ああ、ちょいと知り合いに頼んでな。やりとりは俺だが端末はそいつのだ。今頃履歴だのなんだの消してくれてるだろうさ」
ライトの声色はいつも通りだ。けど、オレを見下ろす目は決して柔らかいものじゃない。淡々として底冷えしそうなのに、その奥に煮えたぎる何かを感じる。まるで敵を見る目だ。
その目がオレに向けられたことは、一度だってなかったはずなのに。
インターノットで凸希望の相手と連絡をして、元々Secret希望で声とか身体が入る写真とか録画はNGって話だった。まさかその相手がこの人だったとは思わなかった。そもそも、そんなものを見るような男じゃなかった。性欲を発散するなら、実際に誰かの身体を抱けば良い。そういう立場なんだから。
ライトの手がするすると服の裾から入りこんで肌を這う。いつもならとっくに入っているエロスイッチだが、相手がこの人だと言うだけでとてもじゃないが頭を切り替えるのは無理だった。
「んっ」
指先がビンビンに尖った乳首を掠めて、甘い声が漏れる。男を受け入れるのに慣れ、準備の終わった身体の反射はこういう時に困る。まあ、こういう時が来ることなんか想定してなかったけど。
ライトの手は迷いが殆どなかった。腰に引っかけてただけの緩いショーパンはとっとと脱がされて、おろしたてのジョックストラップが露わになる。
「……エロい格好だな」
「別に、ただのスポーツ用下着だし」
まあ、オレが身につけてるのはエロ目的なんだけど。
股間のブツだけを優しく覆い、腰や太ももをゴムで固定する、尻が丸出しになるスタイルのデザイン。知らなければ女の紐パンみたいなセックスを楽しむためのものだと思うだろう。
凹のちんこに興味ないヤツも中にはいるし、ケツにちんこぶち込まれて喘いでもふにゃちんなことを気にしてプレイが荒くなるヤツもいる。そういうヤツは一期一会で二度目はないが、このタイプの下着は何せ尻が無防備なので人気はあった。
身をよじって上半身を起こそうとしたけど、話し合いなんかする気がないんだろうライトの前ではなんの時間稼ぎにもならなかった。そのまま四つん這いになるように腰を持ち上げられたかと思ったら、自分の唾液で濡らしたのだろう指がつぷ、と差し込まれた。
「んぁ、あっ」
――それだけで、身体が震える。抵抗する力も、頭もなくなる。
「はっ、指入れただけでこれか。見た通りだな」
「ああっ、あっ、ま、って、まっ、ぁ、あぁっ」
びくびくと勝手に尻が、腰が揺れる。震える。いい場所を知っている身体が、指に当たるように動いてしまう。
「中も随分と蕩けて仕上がってる」
「あぁあ……!」
くちゅくちゅと指で弄られたかと思うと、深く指を突っ込まれて、前立腺をこりこりと揉まれる。
「あ、だめっ、そこ、あ、あ、ぁ――っ!」
びくびくびく! と勝手に腰が跳ねて、押しつけられる快感に頭が真っ白になる。――のに、昔探るように優しく中を解された記憶がフラッシュバックして、涙が出そうになった。
「ふっ、……ぁ」
指が引き抜かれるのも気持ち良すぎて、声が漏れる。次いで、熱いものがピタリとくっついた。
「あ、」
「ここでどれくらいの男を食ったんだ? 流石に俺が負かしてきた連中の数よりは少ないよな?」
「っあぁああ゙――っ!!!!!」
ぬぷ、と先端が押し込まれてからはあっという間だった。十分に慣らした場所に、ゆっくりと、でも容赦なくライトのでかいブツが入ってくる。
一突きされただけでまた頭の中が真っ白になる感覚に、自分が今どうしているのかさえ分からなくなりそうだった。重力さえも掴めなくなるほど強い快感に、ライトに身体を掴まれてなければ暴れていたかも知れない。
「んっ……でもまあ、いいか。お前の最初の男が俺なのは、変わらないことだし、なぁっ」
「あ゙あ゙っ、あ、あ゙ぐっ、う、ぁ、はぁっ、うあ、ぁあ゙っ」
大きくて長いストロークに、内臓をガンガン突かれている気がしてくる。快感と同じくらい、痛みのない拳を叩き込まれているみたいだった。
「それに、もう俺以外相手しなくてもいいだろ? お前が本気なのは俺だけで、俺だってそうだ」
「ふ、ぐぅう……ぁ、い゙っ、ぐ、ぅうっ、~~――!! っあ゙、はあぁ……っ、あ゙ぁああ゙あ゙っ」
「ああ、動画も追々削除してくれ。金はあった方がいいが、どうせ上げるなら俺にあれこれされて、気持ち良すぎてイキまくってるお前の音声メインにすりゃいい。カップルチャンネルって言うんだったか?」
「あ゙あ゙あ゙~~っ!!!!! い゙っ、ぐぅ、いぐ、い゙っ、あ゙、あ゙! っ、くぅ、あ、ああ゙っ、ああ゙あ゙ぁあぁあ゙ぁっぁぁ……!!!」
後ろからガンガン犯されながら、冷ややかな声が降ってくる。いいところばっか突かれてガクガク足が、腰がわなないてるのに頭の隅はキンキンに冷えて凍ってるようだった。
ライトが、何を言っているのか、何を言いたいのか、分からない。知りたいけど、知りたくない。
あの時、ずっとオレを気遣いながら事を進めてくれた男はここにはいなかった。
「はっ、いい声だな……」
カシャ、と音がした後ピコン、と電子音が響いたのを確かに聞いた。
なのにそれどころじゃないオレはすぐに怒濤の快感に悲鳴とも嬌声ともつかない声で叫びまくり、意識が落ちるまでライトの責め苦は続けられた。
ばち、と音がするかと思うほど目覚めは良好だった。
はっとして起き上がると、部屋の状態は……まあ、敷いてた大判のタオル二枚は悲惨だったものの、それ以外は意識が落ちる前と変わってないように見えた。
急いで窓の外を確認しても、まだ暗い。気を失うか、精根尽き果てて寝落ちたかは定かではないものの、そこまで時間が経っているわけじゃなさそうだった。
「起きてすぐする確認が時間か? 随分と余裕だな」
背中に掛けられた声にギクリと身体が強張る。すぐにデカい身体が後ろから被さってきて……それもまた初めてシた時を思い出させた。どろりと尻から垂れるものが何かなんて、分からないほどウブでもない。
「ライト……」
「はは、ひでえ声。碌でもない男に惚れちまったせいで、散々だな」
揶揄いを含んだ声色は酷く優しい。それが一層ちぐはぐで、オレは顔が見たいような見たくないような、不思議な感覚に陥った。
「ほら、水」
「う」
けど、後ろから渡されたペットボトルと柔らかな声だけで素直に受け取って口にする程度には……ライトのことを信用していた。
「まさかこんな方法で稼いでるとはな」
一口飲んだ後に携帯片手にそう言われて、言葉に詰まる。ライトが見ていたのはオレのアダルトサイト……厳密にはアダルトコンテンツを有料サブスクで個人が配信できるプラットフォームの、コミュニティ登録後の画面だった。というか、オレのユーザーページだ。
ここで、動画を一本いくらで売ったり、そもそも有料でコミュニティメンバーにならないと閲覧できない仕組みを使って生計を立てているってわけだ。チップももらえるから、最近は納税処理がめんどい。
「か、買ったのか?」
「当然だろ。まあ最初はノックノックのアカウントを見つけて、覚えがあるなと思ってあれこれ辿ったが……あんなにいじらしく俺に迫ってきたヤツが、他の男に抱かれてアンアン喘いでる動画だの、ぶっといナニを咥えさせられてる動画だの、揺さぶられながら潮吹いてる動画だのを撮って稼ぐほどスレちまうとは思わんかったぜ」
ズバズバと言い募られて、やっぱり言葉は出てこない。だってまだ、ライトが何を言いたいのかの先が見えなかった。
「お前に乞われて、優しく抱いてやった俺は間抜けか? あれっきりになるとは思わんかったぜ」
「そ、そんなことない。ライトは、柔らかくて、綺麗で可愛くて、女の方がいいと思って」
「おいおい、いつ俺がそう言った?」
――言ってない。言ってないけど、
「……ふ、振られたと思ったんだ。あの時抱いてくれたのは、ライトなりの優しさかなって」
「ほお、そんなダーリンはそれ以来ちょっとでも好きになったらすぐに身体を開く男になったって? それとも、好きでもない男に抱かれる趣味がおありかな」
耳の輪郭を唇でなぞられて、ゾワゾワした感覚に顔を背ける。と、咎めるように乳首をつねられた。
「んああっ」
「ここもこんなに感じるくらい立派にしちまって」
思わず前屈みになるオレに、ライトの指先は容赦ない。くりくりと優しくこねられて、また身体がその気になっていく。
「いじらしくて可愛いお前にゃ俺なんかよりもっと相応しいヤツがいるなんて……殊勝な態度でお利口にしてたんだから笑っちまうよな」
「ん、ちょ、ライト、やめ」
「あんなに大事にする、可愛いって言ったってのに、何にも伝わってなかったとは。
ま、ここまでぐずぐずになって落ちてきてくれたと思えば……もう俺が引く理由もないな?」
「あっ、んや、なんでもうデカくなって――」
「思い出せ。初めてヤった時だってなにも無しで勃起してただろうが。こっちはとっくにそういう目で見てたんだ、よっ」
「ああぁっ!」
前屈みのまま、器用に腰を落としたライトがまた入れてくる。亀頭で浅いところを擦られて、膝から力が抜けた。
腐っても男なのにひょいと後ろから支えられて、そのままズルズルとベッドまで後退していく。繋がったままベッドへ乗り上げ、そのまま足を担がれたかと思うと、よく分からない動きで繋がったまま正常位になっていた。
オレの足をライトが両肩に担いで、顔が違い。
サングラスのない素の顔に見つめられて、反射的に目を閉じた。それを許さない、とでも言うかのように律動が始まる。
「んやぁっ」
「なあ、そうイヤイヤばっか言わんでくれ。いくらお前の可愛い声でも流石に堪える」
悲しげな声で言われて胸がきゅっと痛むのに、ライトの指先はオレの乳首をカリカリと優しく爪で弾いて、弛む気配がない。
「んっ、あ、あっやめ、ちくび、やぁっ」
「ほら、もっと俺を欲しがってくれよ、シュウ」
囁く声が近い。揺さぶるようだった腰つきは、奥をゆるゆると突くようなものに変わっている。
「あっあ、ライト、らいとぉっ」
「ん?」
「きもちい、いっ、だめ、だっ、おかしくっ、な、」
「……なら、おかしくなってくれ。他の男には散々見せてきたんだ、俺にも見せてくれるよな?」
「あぁあっ!」
甘い声に、甘やかすような動き方。溜まらずに目を開けると、至近距離にあったライトの顔が迫って、唇が重なっていた。
「あ、ふぅ、う、ちゅ、む、んっ」
「ん、きもちいいな、シュウ……もっと気持ち良くなろうな?」
「はぁうっ、ん、んぁ、はぅ、はふ、」
ちゅ、ちゅ、と何度も甘く吸い付かれて、ひたすら奥をこちゅこちゅと虐められる。気持ち良くて頭が痺れて、涙が滲んだ。
何か今、凄く幸せなのかもしれない。
夢みたいな感覚を味わわないといけない気がして、ライトの名前を呼ぶ。
「好きだ、シュウ。ずっと探してた……今度こそ、俺の側に居てくれ」
都合の良い言葉が聞こえる。
「お前だって……俺がいれば、他は要らん……だろ?」
至近距離で注がれる熱い言葉に、オレの身体はあっという間に高みに登って、――そのまま、ライトが落ち着くまで降りてくることはかなわなかった。
「なあ、今度こそ俺のことちゃんと恋人にしてくれるよな? お前も俺の恋人になってくれよ」
「ひっ、い、ぐ、やら、も、いぎだぐ、ない゙、っいい」
「はは、潮吹いちまって可愛いなあ? ……ああ、ほら、かわいいちんこ真っ赤に腫らして……泣き疲れて腹の上でおねんねしてるじゃねえか」
「~~んっ、ぐぅう……!!!」
「中もちゅうちゅう吸い付いてくるし……なあ、こんなに好きなのに焦らさないでくれよ……それともまさか、今もずっと好きなのは俺だけか?」
「イぐっ……!!! ああ゙っ、あ゙、う、あぐ、ぅ、」
「こんなエロい身体……もう俺以外誘ってくれるなよ? お前が満足するまで付き合うくらいの甲斐性はあるつもりなんだ」
「やだ、い゙ぎだぐな、い゙、いぃい……っ!!!」
「じゃあ、俺以外は要らないって誓ってくれるよな?」
「要らないっ、ライト以外要らない、ライト以外好きじゃない゙っ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ~~っ!!!」
「はっ、言質は取ったぜ」
快楽にグズグズに溶かされている最中、どうもオレはライトに色々と約束させられたらしい。
ブレイズウッドに戻ることとか、ライトとだけセックスするとか、配信の相手はライトだけにするとか。そういう。
しかもこいつ、勝手に指紋認証でオレの携帯から配信サイトのマイページに飛んで、その旨投稿しやがった。誰だよこんな短時間でライトの携帯のハメ撮り動画と写真編集して名前んとこだけ丁寧に音声カットして俺の携帯にデータ飛ばしたヤツはよ。ライトは一体どんなヤツとツテがあるんだよ。
既にコミュニティ内ではそう言う演出かと囃し立てるヤツ、返金だなんだと騒ぐヤツ、黙って抜けてくヤツ、カップル売りになるならそれはそれでウマいとか抜かすヤツ、悲喜こもごも……いや、阿鼻叫喚って感じになっている。オレ、これを管理しなきゃなんねーの?
すぐに取り消そうと思ったら携帯を取り上げられて、投稿を消さないなら携帯をぶっ壊すのは止めてやると脅しつけられて、オレはがっくりと肩を落とした。こんなやらかす男だったっけ、ライトって。
「ベッドの上での約束事なんか、酔っ払いとするくらい効力ないだろ」
頭がはっきりとして、ホテルからチェックアウトする寸前。
身支度を調えながらぶすくれるオレに、ライトはすっとぼけた声で「そうか?」と言い放った。このツラの厚さが大人だというのなら、オレはまだ大人じゃないのかも知れない。
「ああ、だからお前を抱いたときに散々可愛いだの好きだの言ったのに逃げられたのか」
ライトは合点がいった様子で思い出したようにそう言うと、オレの鼻を摘まんだ。
「あの時はお互い酒が入ってたっけな。今回の騙し討ちはそれでチャラにしといてやるよ、ダーリン。痛み分けってヤツだ」
「……そうかよ」
ぷいと顔を背けると、ライトの唇が追いかけて頬に口づけられる。その行為が慰めや誤魔化しなんかじゃないことを、オレが一番よく知っていた。
ライトは軽い気持ちでキスなんかしない。少なくとも仲間や知り合いにそうしている所は見たことがなかったし、ライトの周りに居た女の子達にしているところだって一度もない。
「嬉し泣きか?」
「泣いてない」
やっぱり、オレの目は確かだったみたいだ。
なんのかんのライトとオレは彼氏と彼氏、恋人ってヤツになったらしい。抱かれてたときの殆どが静かに怒ってたライトの印象しかないから全然両思いとか恋人って感じがしなかったが、流石にそれを言うと延長戦を仕掛けられる事くらいは分かる。オレは大人しく口を噤んだ。勿論、ライトがオレだけを愛してくれるっていうなら否やはない。
どんなツラしてブレイズウッドに戻ればいいんだと一応は渋ったものの、あっさりと、最近復活したというチートピアの運営に組み込まれることになった。
「そういうわけで、よろしくしてやってくれ」
ライトの顔つなぎは必要あったのか。久しぶりにカーサと会って、快く受け入れてもらえたのは助かったが、昼日中、チャンピオンが連れてきたとあって妙に視線が刺さる。一体オレは誰なのかと、客とここを離れた後に来た連中はそう思っているのだろう。気まずく感じているオレに、ライトは軽い調子で答えた。
「こいつには彼氏がいてな。まあ俺なんだが」
「は、はあ?! っおいライト、そういうことを――」
殆ど反射で噛みつこうとしたオレの唇を、ライトのソレが塞ぐ。
きゃあ、と可愛い女の子の……多分、気のせいでなければはしゃいだような声がした。
ああ、視界の端でカーサが呆れと驚きで凄い顔になってる。
周りの反応なんか把握しているだろうに、ライトは全く意に介さずキスを終えると、俺の肩を抱いて
「そういうわけで、こいつに手を出したら覚悟しとけよ」
と、まあ、そういうキメ台詞を、色男らしくキメて見せた。
ばかやろう! 家族連れもいる前でなにしてんだ!!
オレは何をどう言えば良いのか分からず、取り敢えずさっきの好奇の目が違う種類の好奇の目に変わったことだけはひしひしと感じながらどうライトをしばいてやろうかと思案する。俺が今何を言ったって夫婦漫才みたいな受け止められ方をしそうで躊躇っていると、
「従業員に手を出してんのはあんたの方だよ!」
「いてっ」
オレ達の横からカーサの拳が飛んだ。本気じゃないから甘んじて受けたのだろうライトはズレたサングラスをかけ直すと、二発目をひょいとかわし、ひらひらと手を振って店を出て行った。
……しばらくは裏方で経理と在庫管理メインで動いてくれれば良いって言ってくれたカーサには感謝しかない。どうすんだよこの空気。
あとカップルチャンネルと化したコミュニティは結果的に好評を博した。ライトの甘やかしいちゃいちゃ焦らしセックスと、それに乱れまくるオレが一定の層にぶっささったかららしい。
前よりチップもよく飛ぶようになって、ローション代だの資料代? だのと名目を付けた金までじゃんじゃん入ってくる。なんならオレが一人でシてた頃から見てたらしい最古参勢からはご祝儀だとか言って、桁のおかしい金額まで送られてきた。
オレは思ったね。
なんでだよって。
2026/01/23 UP
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