Umlaut

特別夜: ED後の断片 ~ a rainy day ~

 ベッドが沈む感覚で目が覚めた。
「悪い、起こした」
「ん……」
 彼が既に身支度を済ませているのに驚いたけれど、耳に入ってくるのは屋根を叩く雨の音。それも少しキツめだ。
 手を伸ばして彼に触れると、指先が僅かに湿り気を帯びた。
「外、行ってきたの?」
「ああ。畑と川の様子を見にな。……芋が台無しになったらアメルのやつにどやされるからな」
 今帰ってきたとこだ、と彼の手が私の頬を滑る。
「起こしてくれても良かったのに」
「いや、……昨日は付き合わせただろ」
 少しリューグの目が泳ぐ。そこで、一緒のベッドで夜を明かしたそのことを思い出した。
 彼が起きたことに気づかなかったからこそ、寝たままにしてくれてたのかもしれない。
「……一人で行ったの?」
「ちゃんと兄貴に声かけて二人で行ったぜ? ……案の定というか、アイツ、俺たちに遠慮して一人で行こうとしてたから、正解だったな」
 山の中では何があるかわからないから、単独行動は控えるようにと決めたのはロッカだ。
 にも関わらず、あの子なりに私たちを気遣ってくれているらしい。そりゃ、その、アメルもそうだけど、私たちは普段あんまり頻繁に触れ合ったりしないけど、そんな風に心配してくれなくても大丈夫なのに。
「まだ寝るか?」
「……今何時?」
「まだ朝早い。雨のせいもあるが、冷えるぜ」
「リューグはどうするの?」
「お前見てたら眠くなってきた」
 珍しい言葉に目を丸くすると、リューグは僅かに口元に笑みをのせた。頬に置かれていた手が首元に落ちる。
「温かいな」
「……リューグは冷たいわね」
 雨に体温を奪われたのだろう。私はリューグの首に腕を回して、ベッドの中へ招き入れた。ぴったりとくっつけば、直にお互いの体温が混ざり始める。
キョウコ?」
「……暖めてあげる」
 私の言葉にリューグは目を細めて、ベッドがまた軋んだ。

2014/11/03 : 執筆
2019/03/03 : UP

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