心恋相語れり
先輩
後輩が帰った後、審神者は頭をかいた。近侍として常日頃側に控えさせている大倶利伽羅が、じっと彼の後ろ姿を見ている。「はー、ちょっと心配だねえ」
「……何がだ」
「いやさ、本人は苦手意識からそうしてるんだろうけど、完全に行動が恋する女の子だったもんで。好きの反対は無関心って言うだろ? 今は義務感と真面目さから、避けるのはいかんとあれこれしてるが」
恋みたいなものだと茶化したのは、失敗だったかもしれん。
そうごちる背中に、大倶利伽羅は息をついた。
「外野がつつこうとつつくまいと、なるようになるだろう」
「いや、そうなんだがなあ。あいつ真面目なんだよ。長い間連れ添った相手と道を分かって直ぐに新しく男を好きになったとなったら、また大分悩むだろうな。あまりため込まないと良いんだが」
心配する審神者の様子に、大倶利伽羅は目を眇めた。確かに真面目で堅い印象の女だったが、この男も本質的には似たようなものだ。
「そうなったときはまた来るんじゃないか」
「まあな。あ、Xデーが大倶利伽羅の修行前か修行後か、おまえはどっちだと思う」
「興味ないな。あんたも、馬に蹴られたくないならその辺で止めておけ」
「何言ってんだ、色恋沙汰は他人事だから楽しいんだぞ。覚えておくと良い」
「忘れた」
「早えーよ!」
2020.02.15 pixiv同時掲載