この話には性描写が含まれるため、18歳未満の方の閲覧を固くお断り致します。

争奪イニシアチブ!

二日目・夜 ハイエナ獣人化しましたが発情期のせいでラギー先輩とセックスに明け暮れることになりました

 昼休みの後は引き続き散々だった。結局表情がぽやぽやしてたらしくてデュースからは熱があるのか心配されたし、エースも大事を取って保健室で休んでくれば、と言うほどだった。……エースに関しては事故の直後、ハイエナの耳だなと先生から言われた後思わず股間に触って『何かぶら下がっている』という発言をしてしまっていたため、不躾に股間を見られてそっちの事情を察してしまったから、というのが本当のところだ。間違いなくおちんちんが生えたと思われている。クリトリスも勃起するからね。仕方ないね。
「お前にも性欲あったんだな……なんか安心した」
 何があったかは面倒くさそうだから聞かねーけど、取り敢えず抜いてこいよと耳打ちされ、私は色々と迂闊だったのを反省すると共に言いようのない羞恥に満たされた。違うのエース。いやあってるけどそうじゃない。男にはなってない。でもありがとうエース。態度が変わらなくてめちゃくちゃ安心した。きっと気遣ってくれているに違いない。そう思わないと恥ずかしくて無理。
 デュースは割と真面目におちんちんできたせいで困惑してるであろう幻想の私を心底心配してくれていた。ありがとうデュース。その私はあなたの幻想だよ。現実はもっと酷いことになってるから目を覚まして。いや覚まさないでデュースの中でくらい綺麗な私を存在していることにしておいてもいいかな。――とにかく、だ。
 ラギー先輩に教えてもらった『本当のところ』は絶対に自分からは言わないし聞かれてもどうにかはぐらかそうと違った瞬間だった。獣人以外に発情期の『匂い』を嗅ぎ取れるようなタイプの人種は早々にいないはずだからだ。自ら墓穴を掘ることはない。私が女だと思ってない――ナイトレイブンカレッジは男子校だし顔面偏差値がべらぼうに高い人がごろごろいるので普通思わない――ような生徒もまだまだいる中で、自ら喧伝するような真似はすまい。私が女だと分かったとしても、魔法薬の影響でと言えば嘘は言ってないしどうにでも誤魔化しはきく。無理に身体を暴かれればそれはそれで被害者としてハチャメチャに大暴れすればいい。伊達にオーバーブロットの現場に何度も遭遇してない。命を脅かされたんだから多少のことでめげてたまるか。
 それに事が大きくなって困るのは学園長もだから、まあ大体どうにかしてくれるだろう。流石に。
 それに、月曜日には魔法薬の効果を解除してもらえる手筈になっている。ラギー先輩とえっちしたことが獣人界隈で話題になって、それが多少広がったとしても、その頃には私はまたただの人間に戻っているわけだ。全部魔法薬の所為だったで押し通してみせるし、今までの伝手を全部使ってでも自分の身は守る。
 エースの申し出に私は午後イチの授業を取り敢えず保健室で過ごして気持ちを落ち着け、決意も新たにどうにか最後の錬金術の授業は受けることができた。錬金術の授業は元々臭いのキツイ材料を扱うこともしばしばなので、グリムは大釜の対角線上の距離で許してくれたのは助かった。あの子直ぐに調子に乗るしすばしっこいからいざというとき手が届かないと困るのだ。
 まあ無事に終わると直ぐに距離を置かれてしまったのだが。
 とは言え、共有すべき情報はきちんと渡しておかねばならない。
「グリム、匂いのこともあるし今日の夜、またラギー先輩に部屋に来て貰うつもりなんだけど」
 普段一緒にいることの多いエースとデュースは匂いのことは関係ないのでいつも通りの距離だ。一人……いや一匹だけ距離を取る相棒にちょっとだけ声を張ってそう伝えると、グリムは首をかしげた。
「ラギー? そういや昨日も来てたはずなんだゾ? ……オマエなにか言われたのか? 弱みでも握られたのかっ?」
 そして、どこか慌てたように声を荒げる。それでも近寄ってこないところがグリムだなあと思いつつ、私は首を横に振った。
 グリムと私は揃って初めて一人扱いだから、連帯責任になることも少なくない。自分が巻き込まれる要素になり得るからだ、ということは冷静な頭では理解できるけれど、それでも自分のことのように――実際そうなんだけど――心配してくれるのが嬉しかった。だからできるだけ朗らかに見えるように笑顔を浮かべる。少なくともグリムが心配するようなことは、何もない。
「ううん。昨日の続きなんだけど、ちゃんとマドル払って相談にのって貰うだけだから、弱み握られてるとかはないよ」
「……なんか嫌なことされたらオレ様に言うんだゾ! 直ぐにあの野郎の尻尾燃やしてやるからな!」
「多分そんなことにはならないと思うけど……うん。ありがとうグリム」
「オマエはオレ様の子分だからな。今は酷い臭いでも、来週元に戻ったらきっと臭いもなくなるんだゾ」
「そうだといいなあ」
「ふなっ……そうじゃないとオレ様困るんだゾ!」
「ふふ。そうだね。私もグリムの側に居られないのは困るな」
「ラギーはちゃんと役に立ってるのか?」
「学園長よりは余程」
「ならいいんだゾ」
「お前らその距離で会話すんのやめろ」
 エースに指摘されて、それもそうだと頷く。五メートルは確実に離れている距離だった。とは言え、グリムにとっては厳しい匂いのようなので、無理に近寄ることも憚られる。
「地味にこの距離不便なんだよね」
 近くにいてもグリムを止められないのに、こんなに開いていたらもっとそうだ。
 やれやれとため息をつくと、それならいっそお互い干渉しない距離ならどうだとデュースが言った。
 どちらかがどこかの寮へ外泊するのはどうか。なるほど?
 エースが肩をすくめる。
「つっても、監督生は今日ラギー先輩とオンボロ寮で先約があるんだろ? グリムが外泊するっきゃ無くない?」
「そうなるな。まあ、監督生が監督生として振る舞えない以上周りのサポートは必要だろ」
「そうだけどさあ。……まあ、グリムの方が監督生に近づくのも嫌ってんなら、子分を守るのももしかしたらラギー先輩の方がいいのかもな」
 ちょっと意地悪な顔をしてエースがグリムを見る。勿論グリムは憤慨した。
「そんなことないんだゾ! ラギーのヤツなんかよりオレ様の方がよっぽど子分のこと守ってやれるし、子分はオレ様の子分で、ラギーなんかのじゃねえ! 今は臭いからイヤなだけなんだゾ……」
「分かってるって。ラギー先輩はタダじゃ守ってはくれないしね」
「そうだゾ!」
「はいはい」
 軽口を叩きながら、錬金術の授業で使ったものを片付け、白衣をしまい、エースとデュースは部活の準備を。私は寮に帰る支度をする。グリムはハーツラビュル寮に外泊すればお菓子が食べられるかもしれないと割と乗り気で、部活が終わる頃に向かうようだった。
 そんな様子を見て、『そんなの完全に「今日、親いないの……」展開じゃん』とか考えていたのは内緒だ。いや、考えるでしょうそりゃあ。健全な高校生ですよ?
 けれど、確かにラギー先輩とどうにかなりたいとは思ったけど、実際にどうにかなってしまうとなんだか妙に心が揺さぶられてまずい。発情期の所為なのか、えっちなことが頭を掠めると身体がむずむずする。具体的にはその、クリトリスが膨らむのもそうだけど、乳首がブラの中で勃起して、やけに擦れるように感じて意識してしまったり、淫らな気持ちになってしまう。
 頭を振って煩悩を振り払おうとしていると、私を見ていたエースがこっそり耳打ちしてきた。
「監督生さあ……性欲あったのはほっとしたけど、ラギー先輩襲うなよ?」
「心配どころが逆では?」
「いや今のお前見てるとマジで心配なんだわ」
 なんか目が据わってるし、と言われて自分の頬を両手で挟み込んだ。
「マジ?」
「一応言っとくと逆レイプも犯罪だからな……?」
「合意のない性行為は男だろうが女だろうが全部犯罪なんですが」
「まあ下半身オーバーブロットしないように性欲は発散しろよ……オレが言えるのはそれくらいしかねえわ」
 随分と失礼なことを言ってくるエースと品のないやりとりをしながら教室を出て、廊下を歩く。流石に既に合意の上セックスしました、今日もします、とは言えない。
「冗談はともかく、マジで危なそうならラギー先輩に交渉して保険かけとけよ? あの人なら対価に無理難題吹っ掛けられることはないだろうし」
「アズール先輩と違って断られるリスクはあるけどね」
「うわヤブヘビ。あん時は悪かったって」
「別に掘り返してないから。それにウィンターホリデーの時来てくれたじゃん。あの時は本当に嬉しかったよ」
「全部終わった後だったけどな」
 照れ隠しなのか、エースの目が泳ぐ。エースは意地悪なことをよく言うけど、ストレートに感謝するとめちゃくちゃ照れる。最初にそれを見たのはいつだったっけ。悪い奴じゃないんだなあって思ったものだ。
「まっ、土日は寮で大人しくお勉強頑張れよ」
 連れ立って歩いて、廊下の突き当たり。二人はそれぞれの部活場所へ。私とグリムは校舎を出てオンボロ寮へ。
「うん。二人も部活頑張って。怪我しないようにね」
「へいへい」
「ああ。監督生も気をつけて。グリムは後でな」
「おう! 楽しみなんだゾ!」
 ――さて。根回しをしなくてはいけない。


 オンボロ寮の物理セキュリティはガバガバだ。これはもう知っている知らないの話ではない。立て付けが悪くなっているドアやガラスが割れて目張りされている窓を見れば、興味がない生徒であってもオンボロ寮のセキュリティについては察せざるを得ない。
 しかし、仮にもあの保身に余念がない学園長が異世界人という、見方を変えれば唯一無二の珍獣であり女をそんな場所に転がしておくだろうか? いや実際は転がされているのだけれど、オンボロ寮におけるセキュリティはゴースト達が担ってくれていたりする。一緒に過ごす中、新鮮な話し相手ができてオンボロ寮が顧みられて嬉しいゴースト達と、私たちを脅かさない存在になった彼らには生活の細かな知識面を教えて貰ったりして良好な関係を築くことができた故の成果だった。
 といっても、不審者を追い払ってくれるわけじゃない。彼らがある程度物理的に干渉できるとは言っても、荒事が得意なわけではないからだ。そのかわりというか、本当に身の危険が迫ったとき、学園長の所までそれを知らせに行ってくれることになっている。スマホで連絡とかのんきなことはしていられない状況もあるだろうし、物理的な障害がない彼らは心強い。寮のことを熟知しているのもあって、ちょっかいをかけようとしてきた生徒から安全に外へ出してくれたこともあった。実績が既にあるのだ。学園長よりもよっぽどね。
 そんな彼らに、今回の件のことは話をしておく必要があった。
 昨日はハイエナ獣人になった経緯や、その関係でラギー先輩と話をすることを伝えていた。彼らは私やグリムを寮生として受け入れてくれているので、普段から勝手に部屋に入ってくることはない。だからわざわざ部屋に入らないでくれ、なんて言う必要はなかった。別室とは言えグリムもいたし。
 けれど、今日はどうだろうか。グリムもいないからきっと心配してくれるだろうし、だからこそその、大声が聞こえたり、ガタガタと激しい物音がしてもそっとしておいて欲しいのだと話をしておかなければ――金にモノを言わせて実現させた『恋人がするようなセックス』が阻まれかねない。
 折角! せっかく先輩がアフターサービスと称してやる気になってくれているのだ! 実質タダで! 信じられないことにバイトよりもこっちを優先して! なのに! よかれと思って乱入されたら! 公開プレイになるだけでなくラギー先輩を金で買ったことがバレかねない! いや、バレる。
 だってラギー先輩とは恋人でも何でもないのだ。恋人を装ってくれ、と、依頼すれば先輩は応じてくれるかもしれないけれど、追加で出せるマドルも物資も、私にはない。ただでさえ学園長から面倒事へ首を突っ込むように言われることもあるのだから、安易にパシリになることもできない。仮にパシリになるとしてそこに割く時間も、成績を鑑みると厳しい。つまりバレることは必至。
 金銭が絡む性行為なんて許してしまえば、学校の風紀が乱れる。学園長の耳に入る。そして待っているのは社会的な死。退学ワンチャン。というかこの学校から放り出されたら実際に多分死ぬ。紆余曲折の末どうあがいても死ぬ。それは避けたい。そういや帰れない私をタダではないとはいえ学園で保護してくれたのは他ならぬ学園長だったな。優しいので! が語尾なだけはあった。でも流石に今回は私が全面的に悪いことをしているので放り出されても私の自業自得でしかない。まずい。
 いやよく考えたら本当にわりと考えなしに話を振ってしまったな……ラギー先輩は悪くないけど巻き込んでしまうだろうからやっぱりそもそもバレないようにしなくてはいけない。バレなきゃいいんスよって先輩も言ってた。その通りだ。
 グリムがいそいそと出かけていった後、私は談話室でゴースト達に集まって貰った。
「そんなわけで、今日もラギー先輩が来るんです。一応お泊まりなのでお客さんって感じですね。私の部屋でお話をするつもりだし、もしかしたら盛り上がって大きな声とか音とか出しちゃうかもだけど、心配しないで」
 話を聞いてくれるゴースト達は、思い思いに返事をしてくれた。ただ、やっぱり本当に大丈夫なのか、と気遣わしげな目線で見られて、私はこくりと喉が鳴った。
 嘘はついてない。嘘をつかない範囲で、けれど本当のことは言わないように気をつける。そして、嘘をつくときに一番効果的なのは――
「……その、ラギー先輩は私の好きな人、だから。そっとしておいてくれると、嬉しい……です」
 ほんの少し、真実を混ぜること、だ。
 ゴースト達の顔が明るく変わったのを見て、私は内心でほっと息をついた。
 これで、仕込みはオーケーだ。


 ラギー先輩が来るまでに色々と準備をしておこうと、私はそそくさと夕飯を食べて、取るものも取りあえずお風呂を沸かした。しっかりと身体を温めて、普段は入れない入浴剤を入れたりして、身体も綺麗に洗う。
 ――昨日。先輩が舐めてくれるとは思わなくて、いや、ちゃんと身体は洗ったけど、それでもまさかあんな……しっかりと口に含んで、フェラ……フェラでいいのかな? その、吸って、舐めて、扱いてくれるなんて全くの予想外で。
 今日は恋人っぽくというリクエストの上でするわけだから、その、万が一他の所まで舐められても問題ないようにしなくては、と、言うわけだ。
 先輩が耳の付け根をさりさりと舐めてくれたのを思い出して、勿論頭も耳も丁寧に洗う。尻尾もそう。
 耳はともかく、尻尾の方は洗うのに慣れなくて、取り敢えず優しく扱くようにしていたらそれだけで身体の奥が疼いてしまった。本当に性感帯として強い場所なんだ、と思う。獣人の尻尾には本人の許可なく触れてはいけない、というのはアニメや漫画の『設定』ならありがちだ。性感帯だからというのも。でも、実際に自分で体験してみて、深く理解せざるを得ない。きっとこのツイステッドワンダーランドにおいても獣人の尻尾は気易く触って良い場所ではないのだろう。実質お尻に触るようなものだ。それはそう。
 どうにか尻尾を洗い終え、いつものように身体を洗う。腋とかうなじとか、普段はそこまで強く意識しないところもしっかりと。
 女性器は無闇に石鹸などで洗わない方が良いというのは知識として知っているから、シャワーで優しく流しながら……そう思ったのに、
「んっ……♡」
 少し勢いを緩めた暖かいお湯がクリトリスに当たって、その上セックスを意識して触っているせいか、身体が徐々にその気になっていくのを感じる。昨日はそんなでもなかったのに、ラギー先輩の身体を、彼から愛撫され、刺激されることを知ってしまった身体と脳はすっかり味を占めてしまったようで。
 ラギー先輩、と声に出せば、どこか甘えた自分の声にさえ煽られて、熱が上がる。シャワーの出しっぱなしは勿体ないとそれ以上は控えたけれど、それでも最終チェックで手鏡を使って自分のアソコを映して触っていると、とろとろと愛液が溢れてきて止まらなくなってしまう。
 肉襞(にくひだ)の隙間に汚れが残ってないか、見るだけのはずだったのに。いつの間にか指先は愛液を絡め取って膣口をなぞっていた。
 息が上がるのを堪える。指を動かすとくちゅくちゅと小さな音が漏れ、浴室で響いた。獣人になって聴覚が鋭敏になった気がする。やけに音が大きく感じられた。
 は、は、と息が上がる。声を出さないように陰唇を触りながら、私は我慢できずに中指の先を膣口にあてがった。息をゆっくりと吐いて、そっと中へ押し込むように動かすと、暖かい肉に指先が包まれていく。
 ラギー先輩の指は、もっと太かった。
 ごつごつしていて、それを直ぐに二本に増やされて。指よりももっと、ずっと太くて長いもので、奥をずんずん突かれて、その感覚と尻尾がベッドに押しつけられて擦れる感覚と、クリトリスを扱かれて何回もイった。
 思い出すだけでまた欲しくてたまらなくなる。自分の指一本じゃ、全然足りない。
 けれど、かと言って今更止めるにはえっちな気分になりすぎた。思い切って指を増やして、中指と薬指を入れる。二本の指で膣口を広げるようにバラバラと動かすと、擦れる度に快感が走って腰が触れた。でも、こんなんじゃない。先輩の指は、的確に私のいいところを刺激していた。
 それを思い出しながら、なんなら私より私を気持ちよくするのが上手かったな、なんて思う。今みたいに目で見たわけじゃないけれど、先輩のおちんちんの先端、一番丸くて太いところ。きのこの傘みたいなところでくちくちと膣口をいじめられたのを思い出す。
「……っ♡」
 びく、と奥が切なく疼いた。だめだ。色々と思い出してしまうともう身体の方がめちゃくちゃに犯して欲しくて腰が揺れて、ラギー先輩早く来てくれないかななんて考えてしまう。実際こんなタイミングで来られて先輩にこの現状を見られでもしたら……――めちゃくちゃ盛り上がるのでは?
 自分でラギー先輩のこと思い出しながら一人でえっちなことしてるのを本人に見られて、お行儀良く待ってられなかったのをお仕置きされるのはなかなかに興奮するシチュエーションでは?
 一瞬真面目にそう思ったが最後、私は指を抜いて自分に我慢を強いることにした。これは後に待っているお仕置き……じゃなかった、ご褒美のための先行投資。報われるのが分かっているからできるタイプの我慢だ。
 そうと決まればやることは決まっている。既に綺麗になったことは確認したのでさっとシャワーを被り直して、浴室から出る。風邪を引かないように身体を拭いて、しっかりと髪の毛を乾かした。学園長からはきちんと動く家電の手配はして貰っているからドライヤーもちゃんとある。勿論型落ちも型落ち、使えるのであれば昔の設備のままとはいっても、この世界の標準さえ知らない私には家電として使えれば何の問題もない。
 身体を拭いて髪を乾かし、歯を磨く。それが終われば後はラギー先輩をどんな格好でお迎えするかだ。耳と尻尾のブラッシングもしたし、そりゃあ恋人っぽいシチュエーションであははうふふができるなら是が非でもされたい。先輩にちょっとでも触りたいなって思われたい。
 考えた末、オーバーサイズで持て余していた灰色のトレーナーだけを着ておくことにした。私が着ると、首元はそれなりに開いてしまうけれど、お尻どころか太ももの半分くらいまでカバーできる。ちなみに誰のものか分からない。学園を卒業するにあたって不要な服を学校に寄付したり、下級生にあげたりするのは割とあるらしく、おこぼれに預かったものの一つだからだ。
 寒いとき下に何枚も重ね着ができるなと思って手に取ったものの、部屋着感丸出しなので今のところ室内以外で着たことはない。
 下着は穿いてたって先輩が来る前にびしょびしょになりそうだし、かと言ってノーパンでボトムを穿いても同じ事なので却下した。男の子を迎えるにははしたないにも程があるけれど、まあ、そういうことのために会うのだし。
 廊下ですれ違ったゴーストににやりと笑まれ、
「頑張れよ」
 なんて励まして貰ったので、着こなし的には男心を擽る無防備な部屋着姿程度に見えているはずだ。多分。
 部屋に戻り、シーツの上に重ねるタオルの準備をして、湯たんぽを布団の中に入れておく。暖炉に火を入れなくても凍えることはない季節だけれど、朝と夜はまだ冷える。暖かいに越したことはない。
 コンドームとローションはラギー先輩に回収されてしまったので、先輩が持ってきてくれるのを祈るしかないものの、昨晩自前のものを取り出していたし、昼間の様子からしてもそこは大丈夫だろう。絶対避妊する力強い意思を感じる。そういう意味でもラギー先輩でよかったと改めて思う。
 まあ、そこまで絶対避妊にこだわるのはどうしてなのかは分からないけど、先輩のプライドとかポリシーに関わるところなのだろう。きっと。病気のこととかも気にしてたし。
 私としてもこんな立場で、その上異世界でまだまだなにも分からないのに身ごもるのは勘弁願いたい。帰れないことが確定してて、その上でこの世界で生き抜く覚悟をして、具体的に身の振り方を定められたならあるいは……とは、思わなくもないけど。今は絶対に無理。
 ラギー先輩をどうやって迎えようか、と思いながら古ぼけた壁掛け時計を見る。昨日は九時だった。今はまだ八時だ。ラギー先輩は部活に入っているけど、今日は活動日だったっけ?
 そんなことを考えながら、ラギー先輩はどんな風に『恋人』っぽくえっちをするのかに思いを馳せてしまう。昼休みの時はあまりそれっぽくできなかったとさらっと言ってたけど、別れ際に顎のラインをなぞられて耳にキスをされたのは物凄くドキドキした。
 私のリクエストをアフターサービスとして了承してくれたって事は、ラギー先輩が恋人にするようなこと――そういえば今お相手がいるのかどうか知らないけど、いたら断られそうな気がするから多分きっといない――を実地で知ることができると言うことだ。
 もし仮に。ラギー先輩に今まで恋人ができてなかったとして。それはそれでラギー先輩が恋人にしたいと思うことが私に筒抜けになるということで。
 ……めちゃくちゃ……美味しいお願いだったのでは……?
 過去の私を最高に褒めたい。今日、先輩はどんな風に私に触ってくれるだろう。どんな顔で、言葉で、声で、私に『夢』を見させてくれるのだろう。
 怖いような、凄く楽しみなような。興奮するばかりの心臓を服の上から押さえて、私は一度ベッドの上を転がった。


 こんこん、とドアノッカーの音が聞こえたのは何時頃だっただろう。時計も見ずにスリッパをぱたぱた鳴らしながら玄関へ急ぎ、扉を開ける。外の冷えた空気と共に、ラギー先輩は滑り込むように中へ入ってきた。気づけばかちゃんとドアが閉まっていて。
 へ、とラギー先輩を見上げると、私の頭の先から足の先までを先輩の目が往復しているのが見えた。サバナクローの寮服を来ている所は昨日を含めて何度か見ているけれど、いつも見られるものでもないのでいつ見ても新鮮だ。ボストンバッグを肩に引っかけているのは、着替えとかが入っているのだろう。
「出迎えにしちゃ随分な格好ッスね」
「そ、それはどっちの意味で?」
「……ま、部屋に入れて貰ってからにしましょうか」
 色んな意味で焦らされつつ、先輩を案内する。防犯的な意味で二階の奥の部屋を使っているから、階段を上がっていく。勿論、お客さんであるラギー先輩ではなく、私が先行するのだけど。
 これ、ラギー先輩が上を見たらトレーナーの中、見えないか?
 思い至った瞬間尻尾が揺れた。意識するとなんだか変な気持ちになって、そそくさと階段を上がる。
「そんなに慌てなくっても……」
 上がりきった後にラギー先輩を振り返ると、にやりと笑われた。見られていたのかそうじゃないのか分からないけれど、どちらにしても私が余程早くえっちがしたいように見えたのだろう。そういうつもりは……ある、けれど。
「……今日はその、グリムはいないので」
「うん? なにかあったんスか」
「いえ、私の匂いがやっぱり辛いみたいで。話の流れで取り敢えず今日はハーツラビュル寮に泊まることに」
「成る程」
 ラギー先輩が相づちを打つのと、部屋へ案内してドアが閉まるのは殆ど同時だった。ラギー先輩が持っていたボストンバッグが床に落ちる。
 瞬間、腰に手を回されて、抱き寄せられた。
「こんな無防備な格好で、乳首立たせてたのはそういうことッスか」
「あんっ♡」
 トレーナーの上から胸を揉まれて、人差し指でカリカリと乳首をひっかかれる。裏地の感触と先輩の爪の硬さに、乳首が快感で粟立ち、一層硬くなる。
「服の上からでもコリコリしてるのが分かっちゃうし……ブラどころか、今は下、なあんにも穿いてないでしょ」
「んっ……♡ だって、どうせ直ぐに汚しちゃうから……」
「ただでさえ一目見てブラつけてないって分かる格好して、その上さらに階段でノーパンアピールされるとは思わなかったッス」
 腰に回っていた手ですり、とお尻を撫でられる。お尻の丸みにそってラギー先輩の指先が動いたかと思うと、おもむろにトレーナーをずりあげるように手の位置が上がりはじめた。トレーナーの裾が上がっていき、それが肌を擦る感触にまで感じてしまう。胸に添えられている手は変わらずに私の乳首をすりすりと刺激して、腰が揺れるのを止められない。
「はあん♡ ラギー先輩、」
「んー?」
「やっ……ん♡」
 トレーナーの上から尻尾を撫でられ、ゾクゾクとした感触に戸惑う。クリトリスにトレーナーの裏地が擦れて、前も後ろも自分から擦り付けるように身体が欲張ってしまう。
「昨日と匂いが違うッスね……石鹸の他に……ああ、入浴剤? それかボディクリームかな……風呂入ったばっかだったり? なのに、さっきからずーっとおまんこからすげーやらしい匂いがする」
 私の頭に生えた耳に唇を寄せて、先輩が囁く。
「これは……悪い子かなあ?」
 ずりあげられて、トレーナーから顔を出した尻尾を直接触られる。するすると先輩の手で毛並みを整えられ、かと思えば、軽く引っ張られて、付け根に痺れるような気持ちよさが広がる。
「待てができなかったんスか?」
「ふあっ……やっ、ちが、……身体、綺麗にしようと思っただけで……」
「身体洗うだけで気持ちよくなったんだ」
「さ、最後まではしてませんっ」
「どうだか。……まあ、そこまで言うなら見させてもらいましょうか」
 これは本当だ。けれど、先輩は床に落としたボストンバッグを拾い直してベッド脇へ放り投げたかと思うと、次はひょいと私を抱えてベッドへ降ろした。相変わらず鮮やかな手際の良さで部屋履きスリッパを払いのけ、自分も靴を脱いでベッドへ上がってくる。足下にあるはずの湯たんぽをかかとに感じながら、私は掛け布団の上で先輩に両足を捕まれ、開かされた。ぷるんとクリトリスが揺れる感覚と共に、トレーナーの中で暖まっていた空気が霧散する。
「あっ」
「ほんと、綺麗でやらしい色ッスね♡」
 あっさりと先輩の前に晒された秘部をまじまじと見られて顔を覆う。そんなことをしても本当に隠したい場所を隠せるわけもないのに、恥ずかしくてそうせずにはいられなかった。
 私の濡れそぼった場所を見てもラギー先輩が全然嫌そうじゃなくて、寧ろ楽しげで、嬉しい。見られて物凄く興奮してしまって、それが恥ずかしい。
「まだ見てるだけなのに触って欲しそうにヒクヒクしてる」
 私が顔を隠したからか、先輩は言葉で私の脳を刺激してくる。そのまま触ってもらえるのかと思ったら、不意に私の足を掴んでいた手が放された。
 どういうことかと顔を押さえていた手を放すと、近い距離で、先輩が私を覗き込んでいた。
「え、なに……っ?!」
「なにって、キスしたいんスけど」
 分かったら手、退けて?
 そう言われて手を退けない奴なんていない。
 とは言え手のやり場に困っているのが分かったのか、ラギー先輩は両手ともそれぞれに手のひらを合わせて、指を絡めてきた。こっちの世界ではどう呼ばれているかなんて知らないけれど、恋人つなぎの状態だ。
「監督生くん、恋人っぽく、って条件忘れちゃってます?」
 珍しく掛け値のない苦笑と共に、軽く唇をついばまれる。ラギー先輩の親指が、私の親指をすりすりと撫でる。先輩の吐く息は何かを我慢するかのように細く震えていて、なのにその表情はどこか柔らかいような、熱持ったもののように見えた。
「サカるのは結構ですけど、折角リクエストに応えるわけだし、味わって欲しいッス」
「うっ……だ、だって……」
 昨日あんなにしたのだ。今更恥も外聞もなくセックスしたくて堪らない気持ちが漏れてしまっても仕方ない。その上こちとら獣人一年生どころか二日目なのに発情期なんですよ。
 つらつらと考えながらももういいか、という気持ちで胸中を舌に乗せて垂れ流す。先輩は耳をぴるぴると動かして一通り全部聞いた後、仕方がないッスね、と笑った。
「とびきりエロいアンタがくたくたになるまで、今夜は放してやんねーッスから。覚悟して」
「ひゃい」
「あ。……サバンナの風、感じさせてやるよ……でしたっけ?」
「ぎぇ! 耳元で色っぽく囁くリクエストはしてないです!!」
「シシシッ。色気ねー声。まあ、サバンナの風なんかどーでもいいんで、オレのこと感じててください」
「ひえ……」
「返事」
「はいぃっ」
 引きつった返事でも大丈夫だったらしい。ラギー先輩はいつものようにいたずらっぽく笑ったかと思うと、急にただでさえ垂れ目で大きな目を柔らかく細めた。
「いい子ッスね」
「ヴッ」
 そんな、本当に私が好きみたいな、顔を、止めて。
 どうにかなってしまう。いやなってるんだけどそっちの意味ではなく。
 私の心臓がバクバクと早鐘を打っているなんて微塵も知らない素振りで、ラギー先輩は何度も私と唇を重ねてきた。最初は触れるだけ。その内にむに、と唇を押し当てられて、ちゅ、と軽く吸い付かれて。
「せ、せんぱ、」
「ん」
「らぎー、せんぱい」
「なに?」
 キスの合間に言葉を紡ぐ。名前を読んで漸く、キスを中断して私を見下ろしてくるラギー先輩の表情はやけに優しそうで、実際、声も随分と甘やかで――胸騒ぎがした。
 名前を呼んだはいいけれど、別に止めて欲しいわけでもなんでもない。強いて言うならドキドキして仕方がないから、助けを求めるような気持ちで呼んだ。私をドキドキさせている張本人に助けを求めるなんて、変な話だけれど。
「……蕩けそうな顔しちゃって。可愛いッスね。食べていい?」
 いつもは元気に上がっている眉尻は穏やかに下がって、なんだか雰囲気が全然違う。ちょっと意地悪な声なのに、どこまでも甘く、優しく感じる。
 心のままに頷くと、ラギー先輩の顔が嬉しそうに綻んだ。
 そんな顔、するんですか。恋人になら。
 ひく、と喉が引きつりそうだった。
「私も、ラギー先輩のこと、食べていいですか」
 欲しい。先輩の気持ちまで、全部欲しい。
 元いた世界に帰れる保証はない。帰れない確証もない。帰ったときここでの記憶がなくなるかもしれない。帰った先の時間がどうなっているかも分からない。
 だから、腐るよりもどうにかここで少しでも楽しいことをして、精々色んな事を謳歌しようと思った。不安は押しつぶして、良かったと思えることで心と頭を埋めようって。帰れても、帰れなくても、記憶があってもなくても。どうなっても、ちょっとでも良い気分の時が長くなければ人生損だ。私の心は有限で、大事にしなくてはすり減ってしまう。だから、だから今回の事故だって、前向きに考えた。上手くいった。
 でも、ラギー先輩を求める気持ちだけは多分、報われることはないだろう。いつ、どうなるかも分からない私のことを、ラギー先輩が望むとは思えない。
 だから、欲しいとは思わなかったのに。自分が彼を好きだという気持ちを持っているだけで良かったのに。こんなのを知ってしまっては。
 もう、知らなかった頃には戻れない。
 ラギー先輩は私を見下ろしながら、何度も両手をにぎにぎと動かして、それから私の左手の薬指にキスをした。
「……いいッスよ。でも、タダじゃあお話になんねえ」
 柔らかく私を見ていた先輩の目が、とろりと熱を帯びる。私が口を開く前に、先輩の口から低くかすれた声が降ってきた。
「アンタの全部、まるごとくれるなら……ですけど」
 言って、ラギー先輩の唇が私のおでこに触れた。
「この髪も、肌も、目も、鼻も、耳も、口も、喉も……」
 言いながら、言った場所を舐めてはちゅ、と口づけられる。少しザラついた舌の感覚。その後の唇の柔らかさに快感が溜まっていく。着ていたトレーナーを脱がされて、何一つ乱れのない寮服姿の先輩の下で、全裸で震える私は、ハイエナ獣人になっているだなんて関係ない。彼の獲物だった。
「鎖骨も、胸も、……腕も、指も、心も、腹も、足も……とにかく、全部」
 くまなく丁寧に全身を舐められ、最後には足裏まで。肌は舐められる度に空気に触れてひやりとして、なのにラギー先輩の生暖かい息を感じる。
 あまりにも飽きることなく繰り返されるそれが終わる頃、私の身体からはすっかり力が抜けていた。……股座がどうなっているかなんて、言うまでもない。
「オレが食っていいなら、いいッス」
 それがどういう意味なのか――具体的には今、この場限りの話なのかは分からなかった。それでも、求めることを知ってしまった。ラギー先輩が欲しいって、思ってしまった。
「いい、ですよ」
 これが一時の戯れでもいい。どうか、どうか、睦言でありますように。
 シチュエーションを楽しむだけの言葉だったとしても私の返事はかわらないけれど。
 ああ、ラギー先輩は確かに私にこれ以上ないまでの夢を見せてくれている。それを叶えたいと、思ってしまうほどに。
 私の、スーパースター。
「全部貰ってください。……たくさん、愛して」
 そして、あなたの心を私にください。
 心の中でだけ続けた言葉は、心底嬉しそうなラギー先輩の顔の前に砂のように消えていった。この笑顔が見られるなら、心がもらえなくてもいいか、なんて。ころころと変わる自分の気持ちに、白旗をあげるから勘弁して欲しいとさえ思う。
「言質は取ったし、――いただきます」
 眦(まなじり)を下げて、ラギー先輩が笑う。そのまま唇が近づいて、もう一度改めてキスをされた。
 目を閉じてそれを受けながら、何度も少しずつ位置を変えて行われる口づけにうっとりと感じ入る。聞こえてくる衣擦れの音はラギー先輩が服を脱いでいるからだ。
 何度も唇に吸い付かれて、それでも全然飽きずに柔らかで幸せな感覚を享受していると、先輩の大きな手が離れて、私の肩を掴んだ。
 目を開ければ、しっかりと上半身裸の先輩が目に飛び込んでくる。私とは違う肌質。匂い。心拍数が跳ね上がるのを感じた。
「今度はうつ伏せね」
 言われるがまま、掴まれた肩に込められる力に助けられつつ、ころりと寝返りを打つ。オンボロ寮と言えどそこそこのふかふかさを持つベッドに伏せをして、私は背中に感じる気配に耳が動いた。伏せた際に顔の側についていた手に、先輩の手が被さる。私の指の間を縫うように先輩の指が挟まって、軽く握り込まれた。
 それで、
「……んぅ……♡」
 つむじからだった。ラギー先輩の舌がさりさりと舐めて、ちゅ、と軽くキスをされる。さっきので終わりじゃなかったのか、と思う間もなく、先輩の舌はうなじを舐め上げ、毛繕いにしては逆方向に下から上へ何度も舌先が肌を伝う。
「はっ……あ♡」
 手の愛撫よりも遙かに焦れったくて、尻尾の付け根がむずむずした。身をよじる。と、シーツに擦れてクリトリスが刺激され、私の腰は自然と悩ましく動いた。背中なんて、と思っていたのに、先輩の息と舌と、唇の感触に肌が粟立って仕方がない。
 性感を煽るようなのに、しつこいほどに舐められて、途中先輩の手が離れたことにも気づかなかった。だから、先輩の舌が尻尾の付け根へ来たとき、
「ひゃうんっ♡」
 かくんと腰が浮いて、クリトリスをシーツに擦りつけるような動きをしてしまった。
「あ♡ らぎーせんぱ、い♡♡ そこっ……♡」
 尻尾の付け根を舐められて、吸い付かれる。先輩の口に押しつけるように腰が、お尻が高くなる。背がしなって、乳首も擦れて、それを宥めるように、ラギー先輩は私のお尻を揉んで、内股を優しくさすった。――宥めるなんてとんでもない。それだけで軽くイってしまいそうなほど気持ちいい。
「ああんっ♡」
 今まではずっと舐めてからキス、を繰り返していただけだったのに、そこだけちゅくちゅくと音を立てて愛撫されて、先輩が来る前からできあがっていた身体はそこだけで容易く高まっていく。腰がくねって、尻尾に変な力が入る。そこを解すように手で揉まれて、足が勝手に力んでしまう。
「尻尾だけでイケそう? 可愛い」
 言いながら、先輩は言葉に反して手を緩めた。もう少し。あと少しそこを可愛がってくれれば、イケたのに。
 快感を求めて名残惜しそうに動く腰が恥ずかしい。恥ずかしいのに、先輩は何も言わずにまた舐めてキスして、を再開した。今度はお尻。
 ぴんと立った尻尾を避けて、尻たぶに顔を埋めるようにしてちゅ、と吸い付かれる。何度かそれを繰り返されて、徐々に位置が膣口へ近づいて否応なしに期待が高まった瞬間、
「ひう!」
 かぷ、と軽くお尻に歯を立てられて、私の身体は跳ねた。
 痛くない。全然痛くないけど、今までとは違う歯の硬い感触に酷く興奮してしまった自分がいた。その上、歯を立てた場所を、まるで傷をなめるような仕草で舐められて、遠慮がちとも取れるその感覚が、本当に、フェザータッチもかくやと言うほどにエロティックで、気持ちよくて。
「痛かった?」
 そんな風にお尻のところで喋られて、私は喘ぎながらどうにか大丈夫ですと言うしかなかった。
 もどかしい。早く触って。私の中。一番あなたを求めている場所。そこで激しく求めてくれたら。
 そう思うのに、この時間が惜しくて堪らない。先輩の目には私がどうして欲しいのか、お尻の下がどれほど淫らに濡れているのか見えているだろうに、そこには一切言及もしない。
 ただ優しく尻たぶを舐めて、リップ音をさせて口づけて、労るように撫でられる。それがたまらないほどに気持ちいい。
「お尻の穴までヒクヒクしてる」
「やっ……!」
 おもむろに両手でお尻を左右に開かれて、私は思わず起き上がろうとした。
「まだダーメ」
「きゃんっ」
 すかさず尻尾の付け根を指で摘ままれてくりくりと円を描くように刺激され、私は起き上がろうと丸めた背をもう一度しならせた。
「イヤだったんスか? 可愛いのに」
「ラギー先輩の可愛いの感覚が分かりませ……んっ♡」
 くすくすと笑いながら言われてそう返すと、太ももの外側を舐められた。舌先はそのまま膝裏まで移動していく。ふくらはぎは何度も手でさすられて、その後を舌が追いかけて。足の指までしゃぶられた後、ラギー先輩は改めて私の上に覆い被さった。もう一度、私の手に自分の手を被せて、軽く握ってくる。先輩の手も身体も、暖かかった。
 ラギー先輩が私の背中に頬ずりをして、はあ、と熱い息が後ろから降ってくる。
「こうしてるだけでもすげー気持ちいいッスね」
 全くの同意しかないけれど、なんだ、それは。そんな、心底甘い声でそういうこというの、本当にずるい。
「尻尾、ぷるぷるしてる」
 私が感じる度に震えるそこは、先輩の肌を擽っているのだろう。心底可愛がるような声に、私はうだうだ考えるのを止めた。――味わおう。このひとときを。少しでも噛み締めて、良い思い出にするのだ。
 決意を固くしていると、ラギー先輩が私の耳に唇を寄せて、こっち向いて、と囁いた。
 顔を動かすと、私の手に重なっていた大きくて暖かい熱が離れていく。名残惜しく感じる間もなく、その手によって優しく身体を動かされた。また、仰向けになる。私の身体を跨ぐように四つん這いになった先輩と目が合う。
「尻尾、痛くないッスか」
 首肯を返すと、ラギー先輩は優しい手つきのまま私の肩周りを撫でた。
「……そ」
 小さくそう言って相づちを打って、それから私の太ももに腰を下ろしたかと思うと、両手で私の胸を寄せて、あっという間に口に含んだ。先輩の暖かい口の中で、ぬるぬるした舌先が乳首を舐めて、少しザラついたその感触に鋭い快感を覚えて腰が浮く。
「あっ♡」
 でも、ラギー先輩は重くてびくともしなかった。身体が思うように動かせないのがいいのか、無理矢理でも何でもないのになんだか妙に興奮してしまう。
 ちゅく、と先輩の口元から音が漏れた。ぴちゃぴちゃと小刻みに小さな水音がして、その音と快感が連動するものだから、私はシーツを乱しながら悶えるしかできなかった。
「ん……♡ あんっ♡ いい……♡」
「はあ……ん、ちゅ、もっと気持ちよくなっていいんスよ」
 ぺろぺろと優しく乳首を舐め続けられて、もう片方は先輩の硬い指先がこりこりと扱く。痺れにも似た快感は、私の身体を炙るようにして理性を溶かしていく。
 じりじりとした快感に苛まれ、腰がもどがしく動いても、ラギー先輩は自分が気が済むまで胸への愛撫を止めなかった。私の嬌声の度に先輩の耳がピクピク動いて、もっと聞かせろとばかりに手が、舌が、乳首を執拗に愛撫してくる。
「くぅ……♡ ん、っ♡ はあ……♡ ふ♡ ……いっ♡」
 ちゅぱ、と吸い上げられて、私は喉をそらして身体を跳ねさせた。音の振動にさえ快感を拾ってしまう。
「強くしすぎた? ごめん」
「ちがっ……♡」
 宥めるようなキスを目尻に受けながら、初めて聞くかもしれないラギー先輩の謝罪の言葉に首を振る。下半身が我慢できそうにないほどの快感だっただけだ。
 ラギー先輩も、彼を見上げる私の顔でそれに気づいたのだろう。少し表情が緩んだ。
「ん。気持ちよかったんならいいや」
 そう言って、私のクリトリスに手を這わせる。
「はうっ♡」
「シシシッ……ガチガチになってる♡」
 嬉しそうな声だった。ラギー先輩が私を見下ろしながら、自分の歯列を舐める仕草をする。白い歯から見える舌先の肉感がエロティックで、この口元が散々に肌を、乳首を堪能したのだと思うと横になっているのに目眩がした。
 同時に、先輩は私の足の間に自分の身体を置き直すと、直ぐに私の太ももへ手を滑らせた。膝裏を持たれて、ぐい、と上半身の方へ押される。
 否応なしに股座を晒されて、私は思わず膝を合わせた。
「あっ♡ やだ、いきなり」
「さっき見せてくれたでしょ」
 そうは言っても、見なくても分かるほど濡れそぼっているだろうそこは、足を開くと空気に触れてひやりとする。急に心許ない気持ちになるのもあって、私は懇願するように自分の膝越しにラギー先輩を見た。先輩は私を見つめ返しながら、くすりと口元に笑みを浮かべて、私の両膝に一回ずつ吸い付いた。
「……開けて」
 伺いを立てるように、そのお願いが息と共に私の膝からお腹へ落ちてくる。 私の頭よりも余程素直な身体は、そう言われておずおずと左右へ膝を動かした。いやもうね。力でこじ開けてこないなんて聞いてないんですよ。時としてユニーク魔法を使う強引さも必要だと思うんですよいやでも恋人とのセックスにそれは野暮というか水を差しかねない。理解しました。ラギー先輩あまりにもパーフェクトに恋人プレイしてくれるじゃんなにこれ五万で本当に大丈夫だったのだろうか。
 掠めていく言葉が声に乗ることはない。私の膝がゆっくりと開かれるのに合わせてラギー先輩の両手がそれぞれの内股をつつ、となぞり、私は息を詰めた。
「いい子ッスね」
 よしよしと内股をさすられて、私はもうそれどころではなかった。ラギー先輩の視線が私の性器に向けられている。それだけで腰が疼いて仕方がない。
 そんな私の様子なんて見なくても分かるのだろうか。ラギー先輩は私の内股に這わせていた手をそのままに、私の股座に顔を近づけて、そのまま
「ひゃううっ♡」
 ――ペロリと肉襞をひと舐めした。そうして、それを皮切りにまるで本当の動物みたいに、ピチャピチャと音を立てて私の膣口を何度も舐めて、愛液を啜りはじめた。内股に添えられていた手は、私の下生えを掻き分けるようにしてしっかりと固定される。
「んやあっ♡ やっ♡♡ らぎー、せんぱいっ♡ そんなとこ、なめちゃ、ひぅ♡」
 欲しかった刺激。一番ラギー先輩を求めていた場所を舐められて、私の身体は大げさなほど敏感に強く快感を受け止めたようだった。
 見られてるだけじゃない。昨日みたいにむき出しの、ぷるんとしたクリトリスを舐めるような、そんな比じゃない。もっと生々しくて、殆ど内臓みたいな場所を先輩に舐められている。それも、ひだの合間まで丁寧に舌を差し込まれて上下にぺろぺろとされていたかと思うと、舌全体を押しつけるようにしてべろんと大きく舐め上げられる。先輩の舌先は柔らかいのに舌の真ん中の方はザラついていて、異なる刺激に腰が戦慄いた。鼻先がクリトリスを掠めるのも良くない。クリトリスの付け根にキスをされると足から力が抜けて、私は膝を曲げたまま両足を大きく開いた状態になる。
「なんで? んっ……ちゅ、オレのために綺麗にしてくれたんでしょ? ……、はあ……ぜーんぶ、オレが食べるって言ったし。残したりしないッス」
「そじゃ、なくっ、て、っああ♡♡♡♡」
 そんなところで声出さないで。全部がダイレクトに子宮へ響いて、中がきゅんきゅんしてたまらない。
 愛液は内股もしっかり濡らしていて、ラギー先輩は本当に一滴も逃さないとばかりに執拗に舐めた。合間に挟まれるリップ音は、もう愛液を啜っているのか肌に吸い付かれているのか分からない。
「たっくさん溢れてくる……かわいい」
「あっ♡ だめえ……っ♡♡ それ、だめっ♡♡♡♡♡」
 ちろちろと膣口を、柔らかな舌先がなぞる。それが中に入ってくることはなくて、コップの縁をなぞるだけのような触れ方にいやいやと頭を振った。
 焦らされて焦らされて、早く入れて欲しいのに焦らされるのも気持ちよくて。
 かわいいと言ってもらえるのが嬉しくて、えっちな姿を見られて肯定してもらえるのが嬉しくて、羞恥心が薄れていく。
「だめなんだ? 止めちゃいましょうか?」
「ああん♡♡ やだっ♡ やめないで……っ♡」
 指とは違うもの。艶めかしい感触。息づかい。ちょっと意地悪そうな声。
 全部が快感だった。この刺激が膣口から入ってくればいいのにと願うほどもどかしくて、優しくて、激しくされたいのに、ずっとして欲しいとも思ってしまう。
 気づけば、自分で下生えを押さえていた。
「中……っ♡ なか、も♡♡♡ してほしいのっ……♡」
 ラギー先輩に見せるように左右に押し広げて、自分からねだる。荒々しくむしゃぶられたい気持ちが膨らんで、もう舌でも指でもいいから、入れて欲しかった。
「かわいいッスねえ」
 ぐるる、と先輩の喉から音がして、心底楽しそうにラギー先輩の目が細められる。それが合図かのように先輩の舌先がクリトリスを舐める。
「んあああっ♡♡♡」
 ちろちろとくすぐるように舌先で舐められたかと思うと、深くくわえ込まれ、扱かれる。先輩の唾液でたっぷりと濡らされて滑りが良くなった唇が上下に動くと、余計に膣に何もないことが切なくなって、腰が揺れる。下生えを押さえていた手を放して、先輩の耳を傷つけないようにその頭に触れる。
 かと言って押しのけるわけにもいかなくて、先輩の口の中は凄く気持ちよくて、どうしようもなくて髪の毛をくしゃくしゃと乱すことしかできない。
「らぎーせんぱいっ♡♡ なかっ♡♡ なかにいれてっ♡♡♡ ほしいの♡♡♡ なかっ、さみしくて♡♡♡ お昼みたいにっ♡♡ よしよしってして♡♡♡♡」
 身も蓋もなくそう乞う。指でさえも入れてもらえないのが物足りなくて、それがそのまま悲しみにも似た気持ちに変わる。どうして触ってくれないの、と泣いてしまいそうだった。
 ちゅぽ、と音を立てて、クリトリスが先輩の口から離される。口に含んだ唾液を嚥下して、ラギー先輩の喉仏が上下に動くのが見えた。
「もうちょっとだけ味わわせて……」
 自分の唇を舐めながら、ラギー先輩はまたクリトリスの付け根から私の襞を舌全体を押し当てるようにして舐め上げた。
「――♡♡♡♡♡♡♡」
 はふ、と息が漏れる。見ることも触ることもできないのに、私の膣がとろとろになって、今か今かと蹂躙されるのを待っているのを感じた。
 確かに、綺麗にした。綺麗って言ってもらえた。嬉しい。気持ちいい。でも、でも、もっと欲しい。私を求めるように激しく甚振られて犯されたい。
 大切に抱いてもらえて本当に夢のようなのに、相反する欲求が募る。痛いのは嫌なくせに、痛みと快楽のぎりぎりの所を責められたいなんて、強欲が過ぎる。
 何もかも全部発情期の所為にしてしまえれば良かった。でも、下心を持ってラギー先輩に近づいたのは私の方だ。
 今すぐ私の愛液を蜜のように味わうラギー先輩の頭を太ももで挟み込んで、奥に欲しいのだと自分の腰を擦りつけたい。でも心は満たされていて、私を味わいたいって言った先輩が心ゆくまで舐めてくれるのが嬉しくてしかたがない。
 もどかしくて何度も腰を揺らしていると、腰を浮かせた瞬間、ラギー先輩の舌が膣口に入り込んだ。
「んああっ♡♡♡」
 ぬるりとした感触。指よりもずっと短くてとても奥までは届かないのに、身体が悦楽に噎(むせ)ぶようだった。きゅうう、とやっと中まで入ってきたものを逃がすまいと中が締まるのが分かる。それでも、先輩の決して長くない舌先を捕まえる事はできなかった。
 舌が出て行き、代わりのようにちゅう、と吸い付かれる。
「ひあっ♡」
 びく、と震えると、ラギー先輩は何度か舌の出し入れを繰り返した。浅い場所でちゅくちゅくと抜き差しされると、最初はそれを悦んでいたくせに、あっという間に物足りなくなって、もっと奥に欲しくなる。
「あああっ♡♡ おくなのっ♡ もっとおくぅ♡♡♡♡」
 指でもいい。中に欲しい。
 夢中で腰を振っていると、まるでそれを押さえつけるように先輩の舌の代わりに、その指が膣口にあてがわれた。つぷ、と入ってきたかと思うと、愛液を馴染ませるようにねっとりと動き始める。
「欲しがりさんッスね……これでいい?」
「んん――っ♡」
 直ぐにくちくちと音を響かせはじめたそこは、あっという間に指を増やされても少しも痛くなかった。指が増えて程なく、愛液を絡めたそれがぬるりと収まると、先輩は指の抜き差しを止めて、指先でトントンとお腹側を押しはじめた。その上舌はクリトリスを何度も舐めて、狂おしいほどの快感を齎(もたら)してくる。先輩の口の中に招き入れられると、私はもう嬌声を上げることしかできなかった。
「ふやあっ♡ いいっ♡♡ きもちいいの♡♡♡ あ♡ んくっ♡♡」
 先輩の指は殆ど動いてないのに、私の中がまるで自分の良いところに導くようにして動くのか、クリトリスへの愛撫も相まって直ぐに絶頂へたどり着きそうで、なんだか漏らしそうな感覚までせり上がってくる。
 焦燥感にも似たそれは昨日味わったものだった。好きじゃない。どちらかというとどうなってしまうのか分からなくて怖かった。でも今は、気持ちいいことも知ってしまっている。
「イっちゃう♡ もうっ♡♡ またもらしちゃうっ♡ らぎーしぇんぱい♡♡♡」
 びくびくとお尻に力が入って、内股が揺れる。
 ――イく。
「ふぁ……っ?」
 最後の一歩、あともうちょっとの刺激で絶頂しそうだった私の身体は、突然理性の空に投げ出されたかのようだった。先輩の指は引き抜かれて、クリトリスは唾液にまみれながら口元から既に離されていた。
「……やだっ……やだ、なんで、せんぱい、らぎーせんぱいっ」
 先輩が来る前からイってない。何度も高まって、なのにまだ一度だって絶頂を迎えていない私は子どものようにぐずった。
 いい子で待ってたのに。よしよしてもらえないなら意味がない。
 自分で触ってしまえ、と考えたのが先輩にも分かったのか、膣口へ伸ばした手はあっさりと捕まれてしまった。
「あとちょっと待って……いい子だから」
 低くかすれた声。甘さはなくて、でも、どこか押し殺したような息づかいに私は大人しく力を抜いた。そうさせるだけの何かを感じた。
 先輩は一つ深く息をつくと、くしゃりと自分の髪の毛を雑にかき上げて膝立ちになった。かと思えば、最初、ベッドの脇に放り投げたボストンバッグの中を漁りはじめる。
 出てきたのはコンドームの箱だった。既に開封されているけれど、間違えるはずもない。私が昨日用意していたやつ。
 ラギー先輩は真顔で手早く個包装のコンドームの端を唇で挟んで、寮服のジーンズを脱ぐ。その目も全く笑ってなくて、唇の隙間と鼻から漏れる先輩の息が荒々しくて、先輩もぎりぎりまで我慢していたのかなんてそこで初めて気づいた。
 乱雑にジーンズが脱ぎ捨てられ、ラギー先輩の全部が露わになる。その股座には重力に反抗するように力強く頭をもたげたおちんちんがそそり立っていた。
 こくり、と喉が鳴る。アレが欲しい、と思うのと、そこにコンドームが被さっていくのは同時だった。窮屈そうに包まれながら、根元まで包まれるのを見届ける。
 それで、やっとラギー先輩は私を見た。まるで射抜くような目で。なのに、先輩のおちんちんは私の膣口に擦り付けられるだけで、貫こうとしてこない。
 はやく、というのは簡単だった。でも、どうしてかラギー先輩を見ていると声が出なくて。
「……いい?」
 今更だ。なのに、まるで大事なことのようにラギー先輩がそう言うから。私は出ない声の代わりに何度も首を縦に振った。
 浅く息をした先輩が、息を詰めて腰を揺らす。
「……っ♡」
 指よりも太いものがみちみちと私の肉壁を拓いて入ってくる。そこに痛みはなかった。ただ圧倒的な快楽だけが爆ぜるように生まれるだけ。私の頭を制圧して、身体で得る感覚が頭の処理を凌駕する。涙で視界がゆがむ。
「♡♡――♡♡♡♡♡♡」
 声らしい声は出なかったと思う。ただひぃ、と本当にか細い音が喉から漏れた。
「ふっ……!」
 何かを耐え忍ぶラギー先輩の声が遠い。欲しいものを与えられた私の身体は、ラギー先輩を奥深くまで招き入れると、容易く絶頂へ駆け上がって、頭の中を果てへと放り投げた。
 くらくらするような感覚。前後不覚になって、それが戻ってきたと感じた頃。ラギー先輩が親指で耳の近くをすりすりと撫でながらあやすように私の頭を包んでいるのを感じた。
「入れただけでイっちゃった?」
「……はい……」
 ぼうっとする頭のまま頷くと、かわいい、という言葉と共に目尻に吸い付かれる。泣いていたらしくて、ペロリと舐められた。
「……さっき我慢できた分、いっぱいよしよししてあげる」
 甘やかすような声色だった。その言葉をうっすらと理解すると共に、先輩の腰が優しく揺れる。とんとんと、先輩のおちんちんの先が私の奥を突く。
「んっ♡ んっ♡ あっ♡ すごいっ♡ ずっと♡♡ きもちいい♡♡♡」
「はあっ♡ ほんと、アンタの中すげーッスね……熱くて、とろとろで……っ♡」
 手を取られ、また恋人つなぎになって、シーツに押さえつけられる。なのに腰の動きは一定で優しくて、甘くて腰が溶けそうなほどの快感がずっと身体の中で溢れている。
 まるで湧き水のようだった感覚が渦潮のように勢いを持つのを感じると、後は早かった。
「っ♡♡ また♡ きちゃう♡♡ らぎーせんぱいっ♡♡ イっちゃう♡♡ 中イキしちゃうっ♡♡♡♡」
「んっ……♡ いい、ッスよ♡ オレと一緒に、イこ……っ♡♡」
 とんとんと優しく突かれていたペースが速くなって、私は身体の思うままにラギー先輩の腰に足を絡ませた。その際踵(かかと)がこり、と先輩の尻尾の付け根を掠める。
「あぐっ♡」
 瞬間、ラギー先輩が上擦った声で私の最奥をがつんと力強く突いた。ぐぐ、と押さえ込まれるようにして押しつけられたそれに、背をしならせてもう一度快楽の山を登り切る。
「あ――♡♡っ♡♡♡♡♡♡」
「ぐ♡ っう……♡♡」
 快感の渦潮が噴水のように噴き上がって、穏やかに外へ広がっていく。痛いほどに握り込まれた手を感じながら、ラギー先輩の腰がぎこちなく揺れて、中で何度も力強く脈打つのを意識する。
 快感のためか顔を歪めながら私を見下ろすラギー先輩の目はぼんやりしていて、口で息をする姿にゾクゾクして、私で気持ちよくなってくれてるのだと思うと凄く嬉しくて。
 きゅ、と先輩のおちんちんを締め付けると、彼の耳がぷるりと震えた。
 かわいい。とは、少し違う。……愛おしい、という感覚なんだろうか。
 好きだという自分の思いと、ラギー先輩の姿を愛でている気持ちは少し違う気がした。
 その違いがなんなのか考えるよりも先に、ラギー先輩が腰を引いて行く。あわせて、私は先輩の腰を固定するように絡めていた両足を解いた。
 だいしゅきホールド、まさか自分がするとは思わなかった。意図せずに先輩の尻尾の付け根、遠慮なくごりっと踵で押しちゃったし。
「んっ……♡」
 膣口におちんちんの先が引っかかって、くぷ、と音を立てながらゆっくりを引き抜かれる。この瞬間さえも気持ちよくて、収まる気配のない性欲がまた膨らみはじめる。
 勃起したままのおちんちんのコンドームを取り替えながら、先輩は漸く表情を緩めて笑った。
「気持ちいいッスね」
「……はい……」
「もっとしていい?」
 不思議な感覚だった。昨日はこんなに私に確認なんかしなかったのに。
 でも、甘えるような顔で私の返事を待つラギー先輩を見てると、どうでもよくなってくる。
「……いっぱい、してください」
 そう言うと、ラギー先輩の笑みはまるで極上のシロップのように甘く深まった。

2020/11/29 pixiv掲載 2020/12/10 UP

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